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ROMA/ローマのHOHOのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.4
Netflixに入っていないので観るのを諦めていたけど、これは映画館で観られて良かった!
なにより、音響が違う。自分の背後から聞こえてくるメキシコの生活音が、映画の中に自分を入り込ませるほどの臨場感をもたらしていた。
主人公・クレオの見たもの、聞いたものを体感しているように思えるけど、白黒の画面であることで、過去の記憶である、という印象が強くなる。

この映画は、アルフォンソ・キュアロン監督の幼少期の記憶を再現したものだという。
両親の不和の中にある一家の子供たちにとっては、家政婦のクレオは「家族」と言って差し支えないほどの存在だっただろう。子供の頃の思い出に立っただけの作品なら、クレオはそんな大切な存在としてのみ描かれて終わるだろう。
しかし、この作品ではクレオの置かれた立場もくっきりと映し、観るものに時折痛みを感じさせる。クレオはあくまで家政婦で、家族団欒の場に居合わせても仕事に向かわなくてはならない。「仕事」が、彼女が家族の場に居合わせても良い、まるで家族のように振舞っても良い、とされる条件なのだ。
だが、終盤、そんな条件付きの関係だとしても、強い絆の在り方を我々は見せつけられる。大きな喪失を経た彼女は、波に飲まれた子供たちを懸命に助け、夕暮れの浜辺に辿り着く。クレオを中心に抱き合う家族を、まばゆい夕陽が包む。白黒のはずなのに、かつてないほど美しい橙色の夕焼けが私は見たような気がする。
静謐で、残酷で、美しい映画だった。
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