全編モノクロームで
ゆったりとした時間を描くようなカメラワーク。
印象的なのは生活音と自然の音。
物売りの笛、鳥のさえずり、犬のけたたましい鳴き声、
車のクラクションの音、街の喧噪、患者の呻き声、
そして波の音…
そうだ、私たちの生きている世界にはたくさんの音があって
その音に囲まれて生活しているんだったよな、と気づく。
傷ついた時、クレオの目線には静寂が訪れる。
音はあるが、シンとしている。
それでも陽射しはやわらかくて優しい。
ラスト近くの、メインビジュアルにもなっている
シーンも、日の光が家族を照らして美しい。
独身の家政婦クレオと、雇い主で子持ちの女主人ソフィー
異なる立場のふたりの女性が
傷つき、半ば絶望して、それでも立ち上がる。
人生の中の新しい「冒険」に出発しようとする。
そのふたりの背中を優しく押すような監督の眼差しと
ままなることも、ならないことも
全てこの中で起こっているひとつに過ぎないと
無言で示す自然の大きさをまざまざと感じました。
美しい映像です。
スクリーンで観られてよかった。