どかんとナイス

ROMA/ローマのどかんとナイスのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.0
希望が持てる映画です。

さあ、困った。人生の岐路に立つといっても過言ではないぐらいの苦境や逆境に追い込まれたとき。
そこまでいかなくても、精神的に落ち込んだときや、何かに行き詰まったとき。そういうときに手を差し伸べてくれる人たちがいます。当人にそんな気は無くても、結果的にそうなることもあるんです。今まで何度そんな人たちに救われたことか。

当たり前なんですね。理屈じゃないんです。そういう人たちは決まって「ただ、あなたにとって良いと思ったから。」「そうしたほうが良いじゃない。損するよりは。」「そのほうがいいじゃん、楽しいから」という言葉を発します。無償なときもあれば、Win-Winなときもあります。ただ、気が向いて世話を焼いただけなのかもしれませんし。
この感覚って、日本人特有のものかと思いましたが、そうじゃないんだと。人間の本能であり、万国共通なんだということを気付かせてくれる映画でした。

主人公はメキシコの決して裕福ではない家の出の少女。モノクロの映像美が、より主人公を雇っているメキシコ在住の上流階級の白人たちの優雅な生活を際立たせます。いかにも育ちの良い、表情や振る舞いからも生活水準が高いことが見てとれる子供たち。彼らの無償の愛情や存在がなお一層、この映画に深みを与えてくれます。

人種や性差、はたまた年齢差や立場も超えて、人が人たらんとするには、如何に他者を気遣うべきかを考えさせてくれる映画です。対比として、人間の性悪な部分もしっかりと描かれています。この矛盾がなければ映画の主題が成り立ちませんし、その命題こそ、あらゆるエンターテインメントを成立させているのではないかと思います。

登場人物たちの人間臭さに触れてください。ムカついたり、優しい気持ちになってください。淡々としているのですが、何か観ていて心地良くなる映画です。
そして、冒頭にも述べましたが、世知辛く、住みづらくなった今の世の中で、こういう映画が作られて評価を受けていること。そのことに希望を抱ける映画です。