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ROMA/ローマのnaoズfirmのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
3.8

何気ない日常🎬

ストーリーは70年代のメキシコを舞台に、ある若い家政婦の日常を描いた作品でした。今作の舞台は1970年頃のメキシコということで、当時のメキシコは一党独裁で経済格差や自由な隣国アメリカへの羨望からデモが多発し、300人程の死者を出したものもありました。そして1970年代というのは一党独裁に陰りが見え始め、国内が混乱に陥っていた時期にあたります。ストーリーの中でも地震で赤ちゃんが死んだり、山火事が起きたり、学生がデモを起こしたり、そんな大変な時代でも、家族と家政婦の営みは変わりませんでした。ストーリーの流れとして不測の事態を日常生活が挟むという構造でら最終的に日常に戻るのが本当に素晴らしいことです。彼らの繋がりは簡単には途切れないということが示されていて感動しました。血は繋がっていないけど心をつなげていくことで本当の家族になっていくという意味合いだったり、移民問題に触れているなど非常にボリューミーな作品でした。さらに男尊女卑だった時代に女性たちだけで子供たちを守っていったということを考えると女性がいかに強いかというメッセージも感じました。

"演出"
今作の特徴としては白黒です。ただ単純に白と黒だけじゃなくて、グラデーションがあり、どっちつかずのグレーがありました。明度の違いで、この白や黒、グレーは何色だって想像できるのがモノトーンの映画の楽しみ方の一つだと思いますが、今作はその魅力が最大限に活かされていた印象でした。壁の色や車の色。空の青と海の青はちゃんと違っていて、白黒でもまるでカラーのように見えました。家族と家政婦の何気ない日常を描くというこの映画のコンセプトを実現するためには、白黒の画面が与える安心感など非常に重要な存在でした。他にもカメラワークも遠いところから撮っていたというか自然な日常をそのまま切り取っていた印象です。また光の使い方が上手でした。ソフィアの家には吹き抜けがあって日光が差し込んでいて明るい印象を与えていましたし、海辺のシーンでは6人を後ろから日光が照らしていて、後光が差している神々しい印象を与えていました。逆光で6人の表情が見えづらいのも心憎い演出です。さらに音楽の使い方も絶妙でした。ストーリーもさることながら演出面でも今作はとても素晴らしい作品だと感じました。
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