Longsleeper

ROMA/ローマのLongsleeperのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.0
余韻が染みる映画。
たぶんタイトルを忘れることはあっても何気ないカットがずっと記憶に残り続けると思う。
予備知識なしに見始めたのもあり、前半は突然の武術に心が掻き乱されたまま「これ何の話なんや」と思うこと1時間だったけど、後半に一気に話が進みつつスッとラストへ収斂していく様子が、何気ないようでいて計算し尽くされてる感じがした。
『羅生門』もモノクロの美しさを前面に押し出した映画だったけど、同じモノクロでもモノクロフィルムの美しさ。
本作は2010年代の解像度でモノクロを撮ることの美しさを体現してる感じ。
あと『羅生門』は白が綺麗だったけど、こちらは灰色の階調がきめ細かくて良かった。
「何でモノクロにしたの」と訊きたくなる映画は過去にちらほらあったけど、このクオリティで作ったら誰も文句言わないね。。。
有彩色を排したことで、違和感なく1970年代のメキシコに連れてってもらえる感じがする。
余計なことが気にならないというか。
セリフが多い大人のほとんどが女性で、男性キャストは揃いも揃って無責任というのが、アルモドバル監督の『ボルベール』を想起させる。
彼がスペインじゃなくアメリカの映画界であれを撮っていたら、アカデミー賞獲ってたのかな。
女性讃歌的スタンスも同じだし。
(英語以外の作品に賞獲らせる傾向はここ何年かだから、一概に言えないけど)
アルモドバル作品からコミカルな要素を絶滅させたらこういう映画になりそう。
二人ともがスペイン語圏を舞台に、スペイン語で映画を撮ってるのを見ると、ラテン文化の底にそういう文脈が流れているんだなと思う。
(それを別の形で爆発させたのが、『スガラムルディの魔女』…笑)
「僕は出産には立ち会えないけど頑張って」「あなたも立ち会えるわよ?」「いや予約があるから」の場面は既視感ありすぎ。
「男が子育てしても役に立たないから」「授乳以外のことは男女関係なくできるでしょ?」「いや…(会話終了)」みたいなやり取り、昭和平成(今もか)の日本(世界)で何万回繰り広げられたんだろう。
新生児の入ってる保育器、何で一つだけに落下物が落ちてくるんだ?と思ったけど、それも計算の上だったのかなと終盤思わされる。
石が落ちてくる子もいれば、そうじゃない子もいる。
クレオが最後に思いを吐露できたのは良かった。
安心とか希望とかなかった(どころか罵られるし銃まで向けられる)もんな。。。
海から出てくるところは生まれることの暗喩のように感じた。
波に押されて砂浜に上がるように、母体の収縮に押されて水と一緒に外の世界へ出ていく。
ぺぺがとりとめなく語る前世の記憶みたいなのも、「今回は会えなかった命も、またきっと生まれてこられる」と言い聞かせているみたい。
ずっと表情の固かったクレオが、最後にソフィに「大好き」と言われて少しだけ表情を和らげるのが印象的。
人は自分がされたことしか誰かに返せないのかもしれない。
Longsleeper

Longsleeper