のん

記憶にございません!ののんのレビュー・感想・評価

記憶にございません!(2019年製作の映画)
4.1
好きなタイプなんだ


いまや日本でコンスタントにコメディ映画を作り続けているのは、矢口史靖監督と三谷幸喜ぐらいではないか。


抜群の傑作だった『清洲会議』、存在をなきものにされつつある『ギャラクシー街道』を経て、久しぶりの映画監督作として、今回は政治を舞台に選んだ。


最初に注意書きのテロップにある通り、物語の舞台は架空であり、現実とは随分かけ離れた描写が多数出てくるが、今回の映画はそうしたリアリティに重きを置いていない。


某白スーツの女性議員や米大統領など、すぐに頭にモデルが浮かぶキャラクターの魅力的な掛け合いが心地よい。

三谷幸喜は脚本段階で役者を当て書きすることで有名だが、テレビや舞台含めた三谷組常連の俳優陣の適材適所な配置が実現されている。


大スターなのに、三谷作品では何故か三枚目で薄汚れた役ばかりやらされている佐藤浩市が個人的にはツボ。たぶん三谷幸喜には佐藤浩市があんな姿に映っているのだろうと思う。


記憶を失った総理大臣が再び政界に革命を起こそうと奮闘する姿は、設定が近いドラマ『民王』の様なテイストで、同ドラマで強烈なインパクトを残した草刈正雄もどこか憎めない敵キャラを好演。



現実を揶揄したコメディとして抜群の安定感と完成度で、観ている間は本当に楽しい作品。
かたや、リアルではアメリカンチェリーどころではない、トウモロコシの爆買いを強いられている現実をみるに、もはや今の日本はブラックコメディを超えているのではないかと暗澹たる気持ちになった。
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