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記憶にございません!のumisodachiのレビュー・感想・評価

記憶にございません!(2019年製作の映画)
3.1
三谷幸喜の最新作。投石事故によって記憶喪失になってしまった総理大臣の物語。

史上最悪の支持率を叩きだした黒田総理大臣は、民衆からの投石によって負傷し、議員になってからの記憶をなくしてしまった。秘書官たちは総理の記憶喪失を隠し通すことを決意。黒田は綱渡りで日々の公務をこなしていくうちに、この国の政治を変えたいと思うようになり……。

なかなか面白かった。爆笑と言うよりも、小刻みにクスクス笑える感じ。特に、何人かいる変装並のキャストの破壊力が大きくて、思わず吹き出してしまった。

映画の内容としては、軽めの風刺に留まっている。もちろん安倍政権を揶揄する表現は多いし、実際の事件を彷彿とさせるものもいくつかある。でも、全体的には柔らかいギャグが多くて平和な手触り。良くも悪くも気軽に楽しめるコメディ映画に仕上がっている。

感心したのは、全員がガラケーを使っていたこと。ハッキリと時代が示されたわけではないのだが、ガラケーを強調することでプロローグに関する当然の指摘を回避することに成功している。その指摘はつまり、「記憶をなくした総理の姿をスマホで撮影してSNSに上げる人間がいない」という不自然さのことなのだが、無理やり時代設定をねじ込むのではなく、やたらとガラケーを使わせるというやり方はなかなか面白いと思った。ガラケーというアイテムひとつで、どの世界のいつの時代のことなのかを曖昧にしているのだ。

どのキャストも面白かったが、欲を言えばディーン・フジオカの崩した芝居が見たかったかな。他がけっこうがんばっていた中で、敢えてかっこいいまま貫かせたのかもしれないけれど、もうちょっと取り乱せるタイミングあったでしょう。あと、衣裳も肩書も説明ないまま終わったけど、小林隆の立場(役職)は何だったの?笑
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