Bell

記憶にございません!のBellのレビュー・感想・評価

記憶にございません!(2019年製作の映画)
4.2
三谷幸喜監督作品。

出演者も安定の豪華メンバー。

予告編を見た時から、とても気になっていました。


頭を怪我し、病院のベッドで目覚めた男。一切の記憶、無し!!

病院を抜け出したものの、通行人に絡まれたりさんざんな目に遭い、入った飲食店のテレビで、自分が史上最低の支持率、国民から大嫌われされている内閣総理大臣・黒田啓介であることを知るのでした。

そして、迎えに来た秘書官たちに寄って、連れ戻されます。

何も覚えていない中、総理大臣の職を続けるのは無理と主張する黒田。

しかし、国政の混乱を避けるためにも、それは許されないと秘書官に押し切られます。

こうして、真実を知る、たった3人の秘書官に支えられ、国民はもちろんのこと、家族にすら記憶喪失になったことを告げないまま、黒田の悪戦苦闘な総理大臣の日々が始まるのでした。

・・・というのがあらすじ。



「記憶にございません!」
といえば、悪い政治家さんの常套句のようなイメージを抱かずにはいられませんが・・・まさかまさか、それが本当になっちゃうなんて!?・・・という実に皮肉の効いたコメディで、面白かったです。

予告編から想像していたのは、記憶を失くした総理大臣を利用して、政治家や秘書官たちが自らの野望を実現しようとする政界ドロドロブラックコメディだったのですが、意外や意外、明るくて心温まる人間ドラマなコメディでした。

そこも良かったです~。

記憶を失った黒田が、周りに利用されるストーリーなのかと思いきや。記憶を失くしたことで、逆に、ポジティブになり、いろんな悪政を改善して行こうと努力するという・・・リアルさはありませんが、良い話じゃないですか~(*^^*)♪

しかも、記憶を失くす前の黒田は、相当に悪いヤツなのに、その周りにいる人達が、悪人じゃないのですよね。

これまでの自分の悪行を反省し、少しでも良い政治をしようと努力する黒田に、秘書官たちがとても協力的だったのも、心和みました。

凄い悪人っていうのが居ない世界だったのですよね~。


政治について、職場での人間関係について、プライベートでの不倫のこと、そして、自分の家族との壊れかけの関係。

もしかしたら、記憶を失くす前の黒田も、「このままでは良くない」と思っていたのかもしれません。

とはいえ、黒田に限らず、人間誰しも、「このままでは良くない」と思っていても、そう簡単には変われないものですよね。

自分を変えたくても、いきなりのキャラ変更は恥ずかしさや、照れもあるし、周りだって、きっと戸惑う。

というか、誰だって、今の自分の性格や言動を良しとしてなくて、変われるものなら変わりたいと思っていること、多々だと思います。けれども、そう簡単には出来ません。それを、黒田は「記憶喪失」をきっかけとして、どんどん成し得て行きます。

政治について勉強したり、国民にとって良い政治を考えてみたり、これまでの悪行を清算しようとしたり、壊れた夫婦関係・親子関係を修復しようとしたり。

記憶喪失故にトンチンカンな言動をし、周りを困惑させながらも、ひたむきな姿は、見ていて心地よかったです。

中井貴一さん、実に好演でした。



そして、そんな風に混迷しつつも頑張る総理大臣・黒田の行きついた先とは・・・(^m^)

最後の最後まで、実に心温まるエピソードが満載でした。



政界を舞台にしたお話ではありますが、実際のところ、リアル感はないコメディです。

でもでも、こんな時代だからこそ、こんなトンチンカンな総理と政界を描いた、明るいコメディがあっても良いなぁと思いました。

もちろん、映画みたいに、なんでも良いように事は進まないでしょうが、ちょっと未来に希望を持ちたいというか、そんな気持ちになりました。

全ての役者さん達が、それぞれ良い味を出した演技をされたのも良かったです。

作品として安定してて、安心して鑑賞出来ました。
Bell

Bell