しめじろー

記憶にございません!のしめじろーのレビュー・感想・評価

記憶にございません!(2019年製作の映画)
3.5
おもしろかったです。不快をすべて排除したようなサッパリした作り。襲いかかる関門は引っ張ることなくスピード解決、次から次へとネタを繰り出しては気持ちの良い方へ処理していく。すごい素直な映画でした。変に政治色を出しすぎないよう配慮されており、現総理支持派もそうでない派も仲良く楽しく見れる映画だと思われます。

ネタが本当に危うい、一歩間違えればうるさがたにネチネチ言われる題材なだけに、全体のテイストとしてはかなり寓話寄りでした。幼馴染の建築会社にいい顔して無駄なハコモノを作る、オッこれはモリカケ亜種か?と思わせて、幼馴染設定が記憶喪失とうまく噛み合う展開に振り上げた拳を下ろされる。アッこのキャラはあの人か?いや別にそうでもないな…。アッこの設定はあれか?いやただのギャグか…。現政権を揶揄するようでもあり擁護するようでもある。むしろ風刺は政界全体に向いているようでもあり、マスコミやひいては国民に向いているようでもある。素直にごめんなさいと教えてくださいが言えないすべての大人に向けているようでもある。かと思えば無毒で素直なファンタジーを見せられているようでもある。この寓話と暗喩を行き来する絶妙なバランス。いい塩梅だと思います。
しかしこの作りなので仕方ないのかとは思いますが、空気ポンプのような単発ネタの連続も軽くておもしろいんですが、ためてためて一気に吐き出すようなダイナミックさも欲しかったですね。井坂、鶴丸官房長官、殺し屋…もっと敵役として盛り上げられた気がするなあ。

女優陣が軒並み魅力的でした。どんどんはっちゃけていく小池栄子、ソファでの誘惑がキュートな吉田羊、堅実なおもしろさで脇を固める斉藤由貴。三谷幸喜はやっぱりこういうのピカイチですね。佐藤浩市もよかったなあ、初登場のバーでのくだりは記者の情の厚さと黒田の地頭の良さをチラ見せする上手いシーンでした。
残業で疲れた頭にちょうどいい、ほんわか笑顔になれる楽しい映画でした。