MasaichiYaguchi

無限ファンデーションのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

無限ファンデーション(2018年製作の映画)
3.7
本作に出演もしていている西山小雨さんの楽曲「未来へ」を原案に、「お盆の弟」の大崎章監督が主演の南沙良さんをはじめとしたキャストたちの即興芝居で繋いでいった青春映画は、10代の若者たちの夢や希望、不安や葛藤を現実の厳しさを交えて描いていて共感を覚える。
群馬県高崎市にある高校を舞台にしているが、地方に住む若者が抱く東京に出て一旗上げたいという願望も作品から伝わって来て、東京生まれ東京育ちの私には面映ゆい感じがする。
この東京に出れば地方にいるよりもチャンスや可能性が広がると言われるが、私からすれば東京にいても努力したり、チャンスを掴もうとしなければ、東京にいようが地方にいようが変わらない。
劇中の台詞にもあったが、如何に能動的、積極的に夢に向かって動くかにあると思う。
主人公の未来は漠然とした夢はあるものの自分の中で留めていたが、或る切っ掛けで演劇部のナノカと知り合ったことで、「シンデレラ」の上演を目指す演劇部の衣装係を任されることになる。
引っ込み思案で人付き合いも得意でない未来だったが、強引で積極的なナノカから絵やデザインの才能を認められたことから、少しずつナノカ以外の部員とも接するようになっていく。
だが逆に人との接触が増えたことにより、嫉妬や妬み、すれ違いによるいざこざ、葛藤や焦燥の感情も芽生えてくる。
そんな未来を癒し、励ますのが、リサイクルセンターでウクレレを演奏して歌っている不思議な少女・小雨。
小雨は本作におけるキーパーソンだと思うが、彼女が傷付きへこたれる未来をはじめとした人々を“再生”させ、その背中を楽曲と優しい言葉で押している。
「シンデレラ」の上演を目指す演劇部は、内部のゴタゴタもあって四苦八苦、果たして舞台に立つことは出来るのか?
劇中で披露される西山小雨さんの歌声は登場人物だけでなく我々観客まで魅了し、歌に込められた思いが心の琴線に触れます。