スチールラグ

無限ファンデーションのスチールラグのレビュー・感想・評価

無限ファンデーション(2018年製作の映画)
4.5
やっぱり、志乃ちゃんはうつむき加減でした。
そして、あの時、加代ちゃんに言っていたように、えーっ、えーっ、えーっと叫んでいました。
でも、少し大人になった彼女は、もう鼻水を流すことはありません。
一方、客席のジジイはというと、涙と鼻水と両方ダダ漏れでした(ティッシュじゃなくて、もう雑巾で良いくらい)。

不思議な映画でした。
そして、心がほろほろと優しくなる映画でした。

実は、最初の方の、母娘のシーンで、おや?と思ったのです。
でもそれは、あまり見ることのない不思議と自然なやりとりだったから。
そこで、やっと、即興劇であることを思い出しました(ジジイ着々ボケ進行中)。
この母娘のやりとりが、何度か出てくるのですが、自然で優しく温かい。
寝そべったまま母に話しかける娘。
夏祭りに出かける支度。
神社からの帰り道。
“不思議と自然”という言い方も変ですが、少し違和感もあるのだけど、細部を見るとその親密さがじわじわ伝わってくるのです。二人の仕草や表情や言葉から。

一方、若手だけが登場するシーンは、さすがにピリピリした緊張感が伝わってきます。
でも、がむしゃらで、やはりちぐはぐなところもあるけれど、一つ一つの会話が、普通すぎるくらいリアルで自然なのです。
単なるセリフではなく、ちゃんと心のこもった彼ら自身の等身大の言葉だと感じました。
でも、これを、カメラのこちら側でじっと待っていた大崎監督ってどんな人?と思ったら、普通のおじさんでした(笑)。

そして、なにより、この映画の優しさの源は、小雨さんのシーンでした。
彼女がリサイクル工場にいたというのは、個人的には象徴的な気もします。
未来の材料が集まる場所。
新しいナニカに生まれ変わる場所。
色とりどりの材料に囲まれてたたずむ小さな背中。
彼女と先生の不思議なインタビュー風のシーンでさえ、愛おしいと思いました。
そして、小雨さんのウクレレと歌が流れてくるとどうしても涙(と鼻水)が止まらなくなります。
幸運なことに、終映後、大崎監督&小雨さんのミニトークと小雨さんの生演奏2曲付きの回でした。
早速、CD買って、サインを頂きました。

家に帰るともう日付は変わっていました。
翌日、一日CDを聴いて過ごしました。とても幸せな週末でした。

「無限ファンデーション」20190906 K’s cinema
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