あーさん

ラストレターのあーさんのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
-
ハードル上がってしまわないように、、
でもどこか期待してしまっている自分を抑えきれず、コロナウィルスが怖かったけれど、一息つきたくて劇場に向かった。。

やっぱり素敵だった。


何から書こうか迷ってしまうが、、
理屈でなく、感性に訴えかけてくる作品が好きだからかな。辻褄が合わないとかは、全く気にならなかった。
だって、好きな人の粗とか見えなくなるって言うから。。笑
多分、岩井俊二監督とは相性が良いのだと思う。


最初は、姉の未咲が亡くなってすぐというのにやけにカラッとしている裕里(松たか子)やその子ども達に違和感を感じたり、未咲の娘の鮎美(広瀬すず)もサバサバしていてどうなの?と思ってしまったのだけど、、
時を追うにつれて、それが何故なのかわかってくる。

数本しか観ていないのだけれど、この監督の作品には感情を露わにする人物はあまり出てこないように思う。
悲しみや苦しみを感じていても、ストレートに出さない。感情は隠れている。
だから一見クールに見えるのだけど、本当に悲しい人ってそうじゃないのかなって思うから、逆にとてもリアルに感じる。

監督のこだわる'手紙'というツール、
故郷である'仙台'の町、
'高校時代'という限定された青春時代、、
その一つ一つが綺麗に交じり合って、何とも言えない味わいの色を織り成す。

人生のどこかで、もしかすると監督は大事な人を亡くしたのかもしれない、
それは恋人なのかもしれないし、親友なのかもしれない、
忘れられない初恋を、ずっと引きずっているのかもしれない、、なんて想像してしまう。

一つのテーマを形を変えながら描き続けるのは、バロック音楽に似ているなと思う。
感情が昂るような激しい旋律の音楽も好きだけれど、どちらかと言うとずっと同じようにゆっくりと繰り返しながら大きなうねりになっていくバッハのような作風に、静かだけれどとても熱いものを感じて、私は好きだ。

小さいのに大きい。
弱いのに強い。
軽いのに重い。

岩井監督の作品は、おしなべてそんな気がするのだ。

どこまでも繊細な人だから、こんなにも美しく描けるのかな。
辛い出来事を美しく描く事で昇華しようとする所は、ジャック・ドゥミのようだなとも思う。



そして、最後の手紙=ラストレターの意味を知る時、私はとても幸せな気持ちになっていた。。

こんな気持ちにさせてくれる作品、滅多に出会えないよ。


キャスト、映像、ストーリー、全てが良かった。


ありがとう。。

ずっと想い続けていれば、いつかその想いは届くんだなって、
どこかで繋がっていくんだなって思えた。




*できれば、"Love Letter"を観てから観ることをお薦めします!

(私は、"Love Letter"より好きでした…)
あーさん

あーさん