Keitan

ラストレターのKeitanのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
4.0
『止まっていた人生からの卒業に泣けるお話』

20200920 123
岩井俊二監督作品。連絡なんてメールやSNSで済むこの時代に、再び手紙というモチーフを取り上げるところが岩井俊二監督らしい。想いを書いた文章を相手に送る、届くまでの時間のズレを巧妙に操作して、ときには誤解やズレからの笑いを生んだり、最後は感動の涙を誘ったり。手紙の行き違いから始まる様々な人生が重層的に交錯する。単なるやり取りだけでなく渡されないラブレターだったり昔の手紙が出て来たり、手紙という媒体を通してこんなに色々なカタチのドラマを作り出せる手腕はさすが。クライマックス、卒業式での二人で書いた文章の使い方も最高で泣いてしまった。

そのタイトルから当然、同監督の名作「Love Letter」との関連を想像してしまうが、あちらは恋人だった故人の初恋を知る物語だったのに対し、こちらは故人を愛した人達が手紙の交流によって止まった人生が動き出すという物語。(物語としての関連は無いが)アンサー映画にもなっているなんて解説も目にするが、そのあたりの監督の意図までは正直汲みとれなかった。誰かに教えてほしい…。

同じ意味でキャスティングについても、前作の中山美穂の二役もアイデアだと思ったが、本作も広瀬すずと森七菜の二人の一人二役というのは物語を語る上でとても効いると思った。

予告の推薦文を新海誠監督が書いている。新海監督も「ほしのこえ」「秒速」「君の名は。」などで手紙ではないが、それこそメールの行き違いの物語を描いて岩井作品に通じる部分があり、影響された監督の一人なんだろうなと納得。
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