ろ

永遠の門 ゴッホの見た未来のろのレビュー・感想・評価

5.0

「僕はいつも、僕自身を描いてきた。」

風の音しか聴こえない、そよぐ風、唸る風。
風は草花を揺らす、草花はゴッホの頬を撫でている。

部屋で腰を据えてじっくり描くのがいいんだ。
いいや、ベラスケスもゴヤも、僕の好きな画家はみんな素早く描写した。
モネもルノワールもドガもダメだ。これからは僕たちの時代だ。
君、ドガは好きって言ってなかったかい?僕はモネが好きだけどな。
絵に対する価値観も描き方も全く異なったゴッホとゴーギャン。
二人は対立してばかりのようにも見えるし、ゴッホの片想いのようにも見える。
だけど実はそうじゃない。

パリに辟易し、一刻も早く南国へ飛びたいと願っていたゴーギャンは、テオの頼みをしぶしぶ引き受けゴッホと同居する。
生活は楽しいばかりではなかったかもしれない。
けれど、風景画を描くゴッホの横顔をゴーギャンはキャンバスに写し取る。
時にゴッホの背中を押す言葉を掛ける。
彼の‘しぶしぶ’は、もしかしたら見せかけだったのかもしれない。

ゴッホの療養中、ゴーギャンから手紙が届く。
その手紙には、君の絵が気に入ったから自分の絵と交換してほしい、返事は君の体調が落ち着いたらで構わない、と書かれていた。
ゴーギャンはゴッホの元を去った。だけど、彼は彼なりにゴッホのことを深く愛していた。


夾竹桃の隣にはゾラの「生きる歓び」を。
酒場の女主人も知らないシェイクスピアの「リチャード三世」を読みながら、彼は何を思っただろう。

カメラは動く、ゴッホを追って。
カメラはゴッホの目となり筆先を追う。ゴーギャンを追い、テオを見つめる。

ゴッホはどこまでも続く黄金の平野に永遠を見た。
「今、今・・・」と数えて、数えて辿り着く「永遠」に、私はゴッホを見ていた。







( ..)φ

ゴッホが自然の中をひたすら歩き、思いのままキャンバスに筆を走らせる映像。
穴の開いた灰色の靴下のまま、かじかむ手を温めながら、脱いだばかりの靴をキャンバスに描く場面。
彼が自身と向き合うその姿、なんて美しいのだろうと涙が落ちそうになりました。

生きていても、死んでいても、いつもそこにいてくれてありがとう。
ありがとうがいっぱいです。