うさふわ

永遠の門 ゴッホの見た未来のうさふわのレビュー・感想・評価

4.5
27歳から画家として生きる決意をし、赴くまま光の流線を愛し表現した彼が、少し羨ましかった。

穂を寄せ合い黄金に煌く麦畑
木々の合間から漏れる優しい光
神の愛に包まれ彩られる心象風景

黄色い日差しのように流れる、鍵盤の
一音一音が至福を奏で一編の詩を彩る

37歳でこの世を去るまでの10年間、絵画に人生を捧げたゴッホ。その短い人生の間、彼が今世に遺した作品は2000点にものぼる。
彼の目を通した美しい世界が、約130年の時を経て眼前に広がる喜びよ。

奇人として扱われ、多くの謎を残した彼の人生を、ゴッホに対して尊敬と愛を込めて、彼の中の真実を紡ぎ出そうと作品に残してくれたジュリアン・シュナーベル監督に心から感謝。
まるでゴッホの生写しの様に、彼を写生したウィレム・デフォーの姿に、共鳴の涙が止まらなかった。

絵を描くこと=生きること。
息をするように筆を滑らせ呼吸を刻み、
手を止めれば、死んでしまう。

考えるな、感じろ。

その筆致から脈々とほとばしるエネルギー
色を失っても生きるコントラストの躍動感

儚い一瞬の連続を捉えては逃すものかと
その光を追う様に残像を素早く描き写す。

彼のタッチは彼自身を表すように、
当時にして画期的で斬新で独特だ。

「生まれる時代を間違えた」
と作中のゴッホは言う。

絵が売れたのは、生きている間で1枚だけ。
世間が彼の功績を評価するようになったのは、晩年の事だった。

人は主観を通してしか世界を見る事ができない。
彼の感じる真実の世界を人々から理解されず、苦しんだゴッホ。

訪れる灰色の孤独 言葉の投石
ゴーギャンや世間の負の言葉が、呪文のごとく反芻する。

「君の描き方は醜い」

「ここの人々は嫌いだ。愚かで意地悪で、
無知な人間ばかりだ。」

呪いを断ち切るように、片耳を切り落とす。

先代の印象派を敬愛したゴッホ
南仏アルルの自然や人を愛したゴッホ
彼を最初から最後まで信じたのは弟だけ
当時の彼は世間から愛される事はなかった。

奇怪に映る人間を理解できないと、突き放すことは簡単である。

しかしその奇怪も主観であり、
奇怪の中にも必ず真実がある。

考えるな、感じろ。

彼は誰よりも眼前に流れるエネルギーを繊細に感じ取っていた。
絵に触れた時、人々を惹きつけるのは、彼を通してその絵に流れる、エネルギーと息遣い。

ゴッホは悲運の事実ではなく、
シェイクスピアの様な謎を含む物語を好んだ。

自室の枠の内に佇む「ひまわり」を眺め、今、
永遠に繋がる一瞬の、眩しい黄色の喜びを感じる。