いずぼぺ

永遠の門 ゴッホの見た未来のいずぼぺのレビュー・感想・評価

3.7
ウィレムデフォーがゴッホにしか見えませんでした…。
広く共感を得られる作品ではないかもしれない。しかし、ゴッホのエキセントリックな部分や不運なことだけを取り上げてドラマチックな展開にしていない本作に好感を持てる。
本作はフランス語と英語の二言語で構成されているが、その使い分けにも作り手の思いを感じとることができる。
また、視点も二つに分けられゴッホの視点からの風景が美しいピアノの旋律とともに映し出される。それは穏やかで暖かい視点である。しかし、全てがクリアではない。もう一つの視点はゴッホ以外の視点で当時の社会において(今もかも)受け入れてもらいにくかった彼の行動やエピソードを語る。

ゴッホは確かにコミュニケーションの難しい人物であったようだが、人間と自然への狂おしいまでの愛情は彼の作品から感じる。そして寂しさも。関わりを欲していないと寂しさも感じない。ゴッホは寂しかったのだ。
彼自身もありふれた他者との関わりに興味がなかった訳ではなく、他者へ伝える方法がわからなかっただけなのかもしれない。ほとんどの社会的コミュニケーションはテオが通訳者として機能していたのだろう。ゴーギャンとの交流は安らぎであり劇薬だったのかも。「社会でうまく生きる」ことが苦手だからって、受け入れてもらえないことが辛くない訳ではない。彼は人恋しい人だったのかも。テオだけが彼の方法でのコミュニケーションを完全に受け入れていたのだろう。

近年、科学的検証でゴッホ自殺説は否定の方向が強まっているが本作も自殺説を否定している。私も否定したい。
だって彼の晩年の作品は美しい光への賛美に溢れている。貪欲にとらえている。
まだまだ生きたかったはず。