こうん

ゾンビランド:ダブルタップのこうんのレビュー・感想・評価

4.3
映画「‪ゾンビランド‬」は単なるゾンビ映画であるだけでなく、痛快なコメディでありながら喪失を描いた物語でもあり、しかし胸の熱くなるような家族映画でもあり、さらにはアメリカ建国より由来する彼らのアイデンティティの根幹をカリカチュアしたジャンル映画でもある。
そしてなにより重要なことは…
俺が初めてエマ・ストーンに邂逅した映画ということだ…!
 
そういう意味合いで僕は「‪ゾンビランド‬」が大好きなのですけど、公開からきっちり10年後の今年、彼らの10年後を描く続編が製作されるということでもう小躍りです。

この10年でメインの4人の俳優さんはそれぞれにキャリアアップし大きくなった(約1名は肉体的にも)。
そのメンバーに、あいつらにまた会える!これを奇跡と呼ばずになんと言おうか。
でも「続編やるならあいつら集まるでしょそりゃ」と思わせるケミストリーも「ゾンビランド」にはあったのです。
普通にみんな仲良さそうなんだもん!
ルーベン・フライシャーもキャリア的には沈んでたけど「ヴェノム」で内容はともかくヒットさせたし、良かった良かった。
 
旧友に会いに行くつもりで早速観てきましたけど、
S・A・I・K・O・Uでしたね…!
 
あのー最近どうかしているかもしれないけど、冒頭のコロンビアのトレードマークのところからの「ゾンビランド」節になぜか目頭が熱くなっちゃって。
その瞬間に、この映画の制作者たちが真面目にふざけながらこの続編の製作を大いに楽しんだ、という事実が溢れ出ている気がして。
そして結果的に間違いなくそういう映画になっていて、楽しい楽しい99分間でしたよ。
帰って酒飲んで風呂入って寝れば忘れちゃうような映画なんだけど、また観たくなるんだこれが。
 
「‪ゾンビランド‬:ダブルタップ」、そのクオリティーは1作目と同等なので、あんまり語ることはない。
ストーリー的にはあれから10年後、想像通りにしかなっていないタラハシーとコロンバスとウィチタとリトルロックがくっついたり離れたりしながら、もはや障害物でしかないゾンビちゃんたちをぶっ飛ばしながら、ここではないどこかを探す旅の顛末です。一作目とおんなじw
これは続編というよりプログラムピクチャーとして作られている感じがして、その感覚が好ましく思いつつ、前作と同じかそれ以上にディテールや皮肉やメタ的な笑いや小ネタが詰め込まれていて、飽きる暇がなかったです。悪ノリ的な新設定や新キャラクターも加わってるし。
特に誰しもが絶賛するであろう、突如登場した新キャラクター、マディソンちゃん!
00年代の‪ブリトニー・スピアーズ‬とかリンジー・ローハンのパロディのようなキャラクターですげぇバカで空気も読めなくてでも超ポジティブなんだけど、なぜか地頭は良いことは匂わせていて「あたいビジネスやりたいんだけど」と語る内容がまんまUber!世が世なら(ゾンビランドになっていなければ)ひとかどのビジネスパーソンになっていたかもしれないという作り手の皮肉な視線もあり、でも結果的には超かわいいんだよね。
演じるゾーイ・ドゥイッチさんのキレキレの演技もあり、愛くるしいばかりのピンクちゃんでした。
 
それに可愛いと言えばウディのハレルソン!娘大好きエルビス大好きバークレー大嫌い(爆笑)(なぜならバークレーは意識高い系の街だから)のアメリカ親父、その愛くるしさは前回より数倍アップしており、ハレルソン劇場といっても過言ではなく、前作以上の終盤の捨て身の攻防にはちょっと涙出ました。トゥインキ―はあきらめたの?
また、冒頭に”アメリカ建国より由来する彼らのアイデンティティの根幹をカリカチュア”なんて書いたけど、ハレルソンのキャラクターはトランプを支持してそうな保守的で旧来の価値観に固執したアメリカ親父のそれですよね。銃は手放さない!なんて、その良し悪しは別として、アメリカ人の一つの典型であり、理想像のひとつだと思いますよ。
でもそこが「ゾンビランド」の魅力でもあると思っています。
 
そしてエマ・ストーン!
彼女の魅力を文字にするなんて愚は冒せない!もうしてるけど。
エマ・ストーンは永遠に観ていられます。出発点でもあるバカバカしいコメディで、すげぇ楽しそう。
楽しそうなエマ・ストーンを観るのもまた楽しいですね。最高。

アビゲイル・ブレスリンは…デカくなったね。それはいいんだけど、声がオバさんで笑った。彼女にあんまりいいシーンがないのがちょっと残念。ラストの展開は流れとして当然だけど、他にも活きるシークエンスが観たかったかな。オープニングのクレジットもメインタイトルの後だったし、もうちょっと大切にしてよ!という感じ。

昔ハマった「KIDS」で出てきたロザリオ・ドーソンさんは同い年でなんか一方的な親近感があるんだけど、貫禄あるなぁ。美味しい役でした。

まぁ細かくアソコがいいここが好きとか言いたいんだけど、結局BMが場をさらっていったので、そこがさらに最高ですね。
ハリウッドにBMほど理知的な人はいないのではないか、というくらいに、具合がいいです。どんだけ愛されてるんだろうか。

前作とほとんど同じことをやりながらディテールが豊か、という続編が大好きだし、そこに僕は制作者たちの賢明なクリエイティヴィティwを見出したいですね。

愛と諧謔がある映画です。そこがこの映画のたった1つの、しかし不可侵の美点です。
そこがいい!
こうん

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