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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のmoridonのレビュー・感想・評価

4.1
待ちに待った新作公開。
こりゃ『若草物語』何度目かのリメイクにして最高傑作ですわ。

まず初めに言いたいのが、ルイーザ・メイ・オルコットの原作の素晴らしさ。「結婚こそが女性の最大の幸せなんて間違っている」「女性だって夢を追いかけてもいいはず」というのは今でこそ当たり前の価値観だが、原作が執筆された1868年当時にこういったことを主人公の口から伝えていたオルコットの偉大さたるや…

そして実際にジョーとローリーの結婚を多くのファンから望まれていたにもかかわらず、オルコットはジョーにローリーからの求婚を断らせるという展開を書き上げます。当時の恋愛観からしたらとんでもない展開だったでしょう。

だからこそ、原作でジョーが結局ベア教授と結婚する展開には私自身モヤモヤしていました。エイミーとローリーの結婚にもあまり納得できなかった。

しかしそれらの展開への斬新な解釈、さらに過去と現在を交互に描く巧妙な手法が物語の面白さをアップデートさせている。ヒロインが結婚しなきゃ読者は納得しない、だから結婚する。愛ではなく作品の面白さを求めた故の結婚。まさにジョーの人生そのものが若草物語だったわけだ。邦題の意味が最後にようやくわかった。過去と現在が行き来するのも、物語を執筆するために自分の人生を回想しているかのよう。

そしてエイミーというキャラクターが今まで以上に掘り下げられている点も素晴らしかった。何よりエイミーとローリーの結婚には意味があった。二人の結婚を知り、ジョーの気持ちは揺れ動いていた。この物語はジョーになりきれなかったエイミーに自分を重ねるものだと思っていたけど、この描写によってエイミーになりきれなかったジョーという視点が新たに加わるのだ。

でもだからって幸せじゃないわけではなくて、幸せの形が違うだけなんですよね。四人姉妹それぞれに違う形がある。その描き方がとても繊細。ものすごく面白かった。

余談ですが、とあるシーンが90年に一度の祝祭に見えてしまったのは私だけじゃないはず…
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