無何有郷

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語の無何有郷のレビュー・感想・評価

5.0
若草物語は母のバイブルで、ジョーは彼女の一番のお気に入りのキャラクター。なので、母世代の女の子が好きそうな物語ね、と勝手に思っていたけど、この映画は原作から大きく改変することなくでも上手く現代的な物語になっている。
この監督、前作に続き少女と大人の淡いを描くのが上手い。そして時間軸が交錯する構成の巧みさ。

結婚しない自由、経済的に依存しない自立を得たはずなのにどこか不自由そうなジョーはまるで現代の女の子を見ているようだ。「女は、心だけじゃなくて知性も魂もある。美しさだけでなく、野心も才能もある。世間が言うように結婚だけが女の幸せなんて思わない。でも、すごく寂しい。」....ここまで完璧に言い当てられるともう泣いちゃう。女についてありとあらゆる問いが立てられ、解けるはずの問題がすべて解かれたあと、解くに解けない問題だけが残った。それが性愛と孤独の問題である......と上野千鶴子も言ってたが、まさに。
ラストの出版社でのやり取り、あそこでジョーに普通に結婚されてたらブチ切れて映画館を出るところだった。ありがとう、あれで救われる人がここにいたよ。

女性の経済的問題や結婚にかなりフォーカスを当てていて、四姉妹みんな魅力的かつコントラストが効いている。そしてベス、これまで病弱だとかガラスの仮面で北島マヤがバカみたいに熱出しながら演じたとかそんなイメージしかなかったけど、彼女1人で少女時代そのものを象徴するような、そういうキャラクターだったんだ。少女のまま死ぬということ、その死がジョーの成熟の大きな転機になるのだと。

文筆家としてのジョーの立ち回りを観ていて思い出したのは、去年一昨年に観た舞台「人形の家Part2」。あれも主人公のノラが家を出た後、作家として生計を立てるのだが、そもそも19世紀という時代に女性が稼げる数少ない手段の一つが文筆であり、その文筆が彼女らに「語らせる」ことを可能にし、それは舞台の上でも有効な手段となる。

全体を通して絵画から飛び出してきたような美しい画に古典の持つ物語の強さ、現代的な視点からの再構成、ずっと大切にしてたい映画。

あと、最後、ジョーの学校に黒人の少女が通っているの、原作であったかな....? 黒人のお手伝いさんはいたような.....そういうところの配慮も良い意味で気になった。
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