幸せってなんだろう?愛するって何?たった一度きりの人生だから、その道筋と結末を永遠の命題のように問いかける。時と共に人は変わり、美しい想い出がもう追いつけないくらいに過去になっても、人はそれぞれに違う歩幅で進んでく。かつて一緒に歩いた同じ道に、もう戻れなくなったとしても。その物語がハッピーエンドになるかどうか、決めるのは自分一人しかいないのだから。
『レディ・バード』でも見事なアンサンブルを見せた、グレタ・ガーウィグとシアーシャ・ローナンによる監督主演タッグで送る、21世紀に息づく新たな若草物語のリメイク作。シアーシャ・ローナンが演じる次女目線で物語は進み、4人の姉妹に舞い降りる悲喜交々のドラマが描かれている。エマ・ワトソン、フローレンス・ピューら、充実の俳優陣を揃え、その中心に屹立するシアーシャの魅力が迸る作品となっていた。
〜あらすじ〜
物語は作家志望のジョーがとある出版社に自身の原稿を持ち込むシーンから始まる。そこでジョーは編集長から物語が説教臭いうえに、最後は必ず結婚して終わるように、と釘を刺されてしまう。だが、その原稿は採用され、ジョーの小説は世に出るきっかけを得た。
時間は遡り7年前。マサチューセッツ州に住むマーチ家の4人姉妹メグ、ジョー、ベス、エイミーは、母と共に決して裕福ではないながらも健やかで幸せな日々を送っていた。次女のジョーは演劇の脚本を書きながら小説家を目指す日々。姉妹たちとの仲睦まじい日々が彼女の創造意欲となっていた。そこへ隣人の貴族の孫息子ローリーが加わり、男女の間には淡い恋心が芽生え始め・・。
〜見どころと感想〜
出版社とのやり取りなどオリジナルの要素もあり、第一の若草物語から第三若草物語までを一気に駆け抜けるため、展開はかなり早い。そこを二本の時間軸を走らせることで突破しており、陽気で眩しい日々を描く過去パート、大人になりそれぞれの苦難に向き合う現代パートとの対比が、後半に差し掛かるにつれて交錯し、4人の姉妹の人生を次なるステージへと進ませていく。流麗なストリングスと瑞々しいカメラワークが、姉妹と彼女たちを取り巻く人々を美しいモンタージュとして写しては、その美しさの儚さをも予見させるかのようだった。
4姉妹にはエマ・ワトソン、シアーシャ・ローナン、エリザ・スカンレン、フローレンス・ピューというそれぞれの個性を反映した4人をキャスティング。キャストの年齢的なものもあるけれど、ともすればエリザが四女に見えてしまうシーンは多かった。ローラ・ダーン、メリル・ストリープといったオスカー女優たちががっしりと脇を支え、そこにティモシー・シャラメが軽やかな風を送り込んでいる。
個人的に今作で輝いていたのはシアーシャ・ローナンとフローレンス・ピュー。シアーシャは20代半ばにしてすでにオスカーに4度ノミネートする、という今最も輝いている女優であり、今作でも主演女優賞にノミネート。フローレンスは『ミッド・サマー』の鬱々とした役とは正反対の快活な役を好演し、こちらも初のオスカーノミネートを果たしている。
今作は従来の若草物語で筆者が本当に求めていたと思しき結末へと掘り下げ、グレタ・ガーウィグが追求する別の解釈へと帰結させている。結婚だけが幸せではない、今の時代にこそその考え方は違和感なく受け止められるだろうし、またその選択肢を選ぼうとした主人公の心の叫びはあまりに切実で、涙が出てしまうほど人間らしかった。
〜あとがき〜
3月には公開されるはずだったオスカーノミネート作品をようやく鑑賞することができました!決して派手さはないですが、それぞれの幸せへと向かう葛藤と苦難を描ききり、壮麗なサウンドトラックに乗せて送る若き名優たちの競演は見どころ満載でしたね。
特にシアーシャとティモシーが丘で感情をぶつけ合うシーンがとても好きで、知らないうちに涙が出てきてしまって自分でも驚いてしまったほどでした。
いつかグレタ・ガーウィグはオスカー監督になると思うけれど、やっぱりその作品の主演にはシアーシャが出演していてほしい。彼女たちの次なるタッグにまだまだ期待していきたいですね。