Ricola

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

これは完全に新解釈版で、現代社会に寄り添った若草物語であると言えよう。

というのも、この作品の構成とフェミニズムの観点をより押し出しているからだ。


この作品に、時間の主軸というものがない。
過去のいくつかの時点と現在を何度も行き来する。
そのため、今自分はどこを観ているのか見失いそうにはなる。
しかし、現在というのは全ての過去に起きたことの結晶であるということを、当たり前のことだが、そのことを特に強調したいのではないかと思った。

現在起こっていることも、過去との繋がりで起きているか、過去の思い出が想起されるようなことなのだ。
だからこそ現在や過去が入り混じっており、それらは全てひっくるめて今の自分や周りをつくっているものなのだ。

過去の楽しかった思い出が、いま直面している出来事で感じている辛さや悲しさを、軽減してくれることもある。
フラッシュバックというよりも、現在のことと過去のことを同列に扱うことで、それぞれ人生でのある時間であることには変わりない、という思いを感じる。

そして、フェミニズム要素が強いということ。
作品の中で、刷新されている一番重要といえることは、言うまでもなく現代女性の生き方の多様性の提示であろう。

主人公ジョーの性格や生き方は「男まさり」なのだろうか。
彼女は、男社会の中でなんとか認められた稀有な女性なのではなく、自分で自分の人生を選択する、ただ一人の人間なのである。

原作では家族への愛に帰結し結婚するジョーだが、「結婚が女の幸せではない」ということを、念押しに編集者に主張することで、現代に生きる女性たちのさまざまな生き方を肯定し、彼女たちの味方をすることを力強く示してくれた。
彼女は、作家として野心的に生きることも、愛する人と人生を共に歩むことも、どちらも選んだだけなのである。
だから彼女の生き方が別に正解というわけでない。

結婚することが幸せの到達点ということではないが、その幸せとは全てそれぞれに寄るものだから、選ぶのはあなた自身ということなのだ。
ラストシーンにおける姉妹で学校を運営する様子に、それぞれの幸せの様子も映し出される。
「彼女たちにとっての幸せはこうだけど、さてあなたはどうしていきたい?」
と、問うようである。

こういった大幅な変更はあっても、原作やこれまでのリメイク作品にあった、人の優しさ、あたたかい交流、家族愛などの、人間が根本的に必要としているであろうぬくもりは、ちゃんと描かれていた。

優しくてあたたかいだけでなく、希望をもたせてくれて、強さに背中を押される気持ちになる、そんな作品だった。
Ricola

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