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ディリリとパリの時間旅行のslvのレビュー・感想・評価

ディリリとパリの時間旅行(2018年製作の映画)
4.3
『キリクと魔女』のミッシェル・オスロ監督作。
去年、フランス語の先生にお薦めされてからずっとずっと公開を楽しみにしていた作品。ようやく観られました。

ベル・エポックの時代のパリへの至福の時間旅行。

まずはその夢のように美しい映像に感嘆させられる。

背景はオスロ監督が実際に撮りためた写真を元にしているとのことで、実写とアニメーションを融合させた独特な映像表現が、リアルでありながらもノスタルジックでファンタジックな輝きに溢れていて、その世界観に一瞬で引き込まれる。

自分もかつて旅した時に訪れた見覚えのある懐かしい場所や、見たことのないような幻想的な景色が次々に展開され、この映像を観ているだけでも旅気分に浸れてとても楽しい。

だけど、この作品はこの時代のパリの美しさだけを見せる訳ではない。

「美しいパリ 腐ったパリ」という言葉が何度か出てくるように、この作品では美しいものだけではなく、この時代の、この社会の、「腐った」部分についてもしっかりと触れられているのだ。

この作品の根底にあるテーマはとても解りやすく表現されている。
混血の少女ディリリや、貧しい人、男性支配団に誘拐された少女たちの姿を通して浮かびあがってくるのは、人種差別や貧富の差、女性蔑視などの問題だ。

それらがストレートに表現されているところが実にフランス的だなぁと思ったし、オスロ監督の強いメッセージ性を感じられた。

次期英国国王のエドワード皇太子が登場する場面で、彼が語った言葉が実に印象的だった。
多様性を受け入れ、互いに理解し合い、誰もが生きやすい世界を創ること…
そんな希望と願いが込められた作品なのだと感じた。

そして、ディリリとオレルがパリのあちこちを巡りながら出逢うたくさんの著名人たちの描写も本当に楽しいものだった。

登場する著名人は100人を超えるとのことで、あちらこちらに色んな人が描かれていて、気付かなかったキャラクターや私の知らない有名人も多いのだけど、名前を知ってる様々な画家や作家や歌手たちのキャラクター造形がそれぞれに凄く面白かった!

ロートレックってこんな感じのおじさんなのかなぁ?と可笑しかったり、サティのピアノが聴ける場面は嬉しかったり、画家たちのやり取りにニヤリとしたり。

全体的にフランス語がとても聞き取りやすくて勉強になるし、とにかく見どころ満載過ぎるし、細部までじっくり堪能したいので、これはDVD・BD化がとても待ち遠しい作品です。
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