まちゃん

恐怖の報酬 オリジナル完全版のまちゃんのレビュー・感想・評価

4.4
激しい濁流が流れる川の上に掛かる朽ちかけた吊り橋。その上をボロボロの巨大なトラックが渡る。吊り橋は激しく揺れ、軋み悲鳴を上げる。叩きつける豪雨、絡みつく蔦、肌に突き刺さる枝。血と汗と泥に塗れながら男達は死に物狂いで吊り橋を渡る。この印象的なシーンに象徴されるように異様な熱気を孕んだ作品だ。CGでは決して表現出来ない生々しい本物の迫力。命懸けの撮影に挑んだ監督ウィリアム・フリードキンの危険な情熱が画面に焼き付いている。南米の密林を舞台にそれぞれの事情で追い詰められた男達が一攫千金を夢見てニトログリセリンの運搬という危険な仕事に挑む。少しの刺激で爆発するニトログリセリンをトラックで運ぶという設定は見事で常にサスペンスをもたらしている。悪路で次々に発生するトラブルの度に凄まじい緊張感が漲り一瞬たりとも目が離せなかった。骨太のシンプルなストーリーに細部の繊細な工夫と優れた映画のお手本のような作りだと思った。またリアリズムへの細部に渡るこだわりも素晴らしい。緑の魔境でのたうち回り苦闘する男達の姿は極限状況での人間のドキュメンタリーを観ているようだった。熱気と狂気の傑作。
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