なべ

恐怖の報酬 オリジナル完全版のなべのレビュー・感想・評価

5.0
一足先に爆音で観てきた。
すごい!かつてロードショーで観たときよりもずっとすごかった。シーンによってはグレインが強めなところがあるけど、それも味ってもんだ。何より音がよかった。爆音のおかげなのかもしれないが、細かい音の妙味に何度もハッとさせられた。
この完全版では4人の男たちの過去が冒頭で描かれていて、どういう経緯で南米の奥地に逃げてきたのかがわかる。輸入LDで観たときは、ここは退屈だと思っていたのに、全然そんなことない。セリフに頼らずに状況をわからせる絵ヂカラはさすがフリードキン。寡黙にハードにみせるみせる!南米奥地の閉塞感も見事で、万策尽きた野郎どもの絶望感が不潔な湿度とともに沁みてくる。
しかし、観終わってこんなに疲れる映画ってあるか? 身も心もヘトヘトになった。ストーリーも場面もすべて知っているにもかかわらずだ。とりわけ神経がやられたように思う。一緒に観に行った友人は「5回ほど死んだ」と言ってたくらいだ。
かつて公開された時は、ちっとも評価されなくて、ぼくと友人だけが「とてつもなくえげつない映画だ!」と声高に叫んでたものだが、今回のデジタルリマスター上映を機に評論家たちが手のひらを返したように褒めている。おまえらいい気なもんだなw
当時も素晴らしかったけど、今回の方が格段によかった。自分が大人になったせいもあるのだろうが、たぶん今どきの映画がこんな風に本気でつくられていないからじゃないか。遊星からの物体Xのときも、2001年宇宙の旅のときも思ったが、ハリウッドは40年間何をつくってきたのかと思う。
この映画の圧倒的な恐怖の前には、どんなスリラーも色褪せてみえる。
なべ

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