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恐怖の報酬 オリジナル完全版のTakaCineのレビュー・感想・評価

4.1
【徹底的な非情と恐怖】
数々の鬼畜エピソードのある、ウィリアム・フリードキン監督作なので"容赦ないはず!"と覚悟はしてましたが、本当に容赦なかった(笑)

まるで「カメラが捉えた決定的瞬間」とばかりに、危険すぎるサスペンス描写が身も心も縮み上がらせます😅

この作品は本当にえげつないです(褒めてます)!

〈飛び抜けた恐怖シーン〉
南米の奥地で危険なニトログリセリン運びに従事することになる、訳あり男たちの各エピソード描写が鮮やかな前半(社会派ドキュメンタリー調)。凄まじい雨風と爆発と危険な運搬描写で緊張感MAX!な後半(ホラーサスペンス調)。

どこかコッポラの『地獄の黙示録』のような、物語を飛び越えてしまうくらい鮮烈な映像・演出がもはや狂気レベル‼️

記憶に残るのは、ポスターに表現されている「吊り橋」シーン。もう「どうやって撮影したの?」と驚くばかりの危険極まりないシーンです。実際に橋を建設し、本番とリハーサルでトラックは5回転落させて撮影したとか。ほら、狂気でしょ(笑)

辺りが真っ白になるくらいの土砂降り雨の中で、今にも陥没しそうなほど朽ちた吊り橋と今にも落ちそうなほど傾くトラック。少しでも衝撃を与えたら、爆発して木っ端微塵です。自分なら車ごとなんて絶対渡らない😥!トラックの重さで吊り橋が落ちるぞよぉ😰!ギシギシ軋む穴だらけの吊り橋を、トラックが進む度に「ヒエェェ~」と思ってました😣💦

金と自由のために命を張る男たち。一触即発な状況で危機を乗り越えて育まれる僅かな連帯感。待ち受ける非情な運命。フリードキンのやり過ぎ演出が、怒涛のサスペンスを生み出しました(役者さん、大変な撮影で殺意を抱かなかったのかな)!

やっぱり本物の爆発は迫力が段違いだし、男たちの埃と泥で真っ黒の顔がまた良い!

男たちの真剣な眼差し、汗、緊張、恐怖、願いも一瞬にして吹っ飛ぶ怖さ…

力の入ったサスペンス演出、冷酷非情な描写、役者陣の顔面力と焦燥感、鑑賞後の虚無感が圧倒的で強烈すぎて、忘れられない衝撃を受けました。

バランスが取れた作品とは思いませんが、強烈な映像と演出は非常にパワフルです‼️

〈幻の作品〉
1977年全米初公開時は『スター・ウォーズ』の大ヒットで惨敗、日本を含めた北米以外では、監督の許可なく無断に約30分カットした92分の"短縮版"が公開され、評価もされませんでした。その後、約40年間も権利問題で上映やソフト化も行われない「幻の作品」「失われた傑作」と言われてました。

今回「オリジナル完全版」(121分)を鑑賞できて凄く嬉しいです😊♪しかも爆音上映なので、エンジン音も爆音も体全体に響き渡る臨場感が凄い♪

ドミンゲス(ロイ・シャイダー)の負け犬感と捨て身の格好良さ!

ニーロ(フランシスコ・ラバル)の笑い声と硬直した顔(確実にホラー)!

タンジェリン・ドリームの音楽が不吉すぎる(褒めてます)!

冒頭のクレジットタイトルや、トラックに描かれている悪魔のような姿。トラックのフロントも悪魔の顔みたいだ(『エクソシスト』を思い出してニンマリ)。

死神に見初められた男たちの顛末。
フリードキンの渾身のサスペンス。

クルーゾー監督『恐怖の報酬』(1953)のリメイク。イヴ・モンタンの格好良さ、シャルル・ヴァネルの人間臭さ(カンヌ国際映画祭男優賞受賞)、白黒映像の凄み、一級のサスペンス演出…こんなに面白くて、心臓に悪い映画は他にはないですね😉

人間ドラマはクルーゾー版、サスペンスはフリードキン版が好みでした。
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