ヌーヴェルヴァーグの始まりと言っても過言では無い、アニエス・ヴァルダ監督による伝説的作品。
『顔たち、ところどころ』で逆キノコカラーのヘアスタイルとチャーミングな人柄に一気に魅了されたものの、なかなか出会えなかった監督作品。
はぁ!やっと出会えた!
もはや感性の塊とでも言うか、モノクロの陰影と構図で魅せるアート感に惹き込まれる。
舞台は監督自信の少女時代の記憶が染み付いた村、ポワント・クールト。汚染した海でも漁は生きる為の手段、政府の目を潜っては禁猟区に繰り出す漁師たちを筆頭に、いくつかのサブストーリーを交えて村人の生活ぶりがまるでドキュメンタリーのように映し出されてゆく。
メインとなるストーリーは、それらとは全くテイストが異なる。パリから久々に村に帰郷した男とその妻。貧しい村人たちと都会のカップルとの対比を効かせながら、決して交わることなく最後まで走り抜ける。
会話は至って抽象的、捉えようによっては哲学的とも。夫の浮気で距離ができた2人の関係を、見事なショット達で表現する。決して視線が交わることなく、時に並行に、時に直角に、フレームいっぱいに収めた2人の顔のアップが頗る印象的。
また、随所で見られるクローズアップの映像も憎いほど。寂れた漁村の朽ちた船も、網も… 全てがまるで美術品であるかのような映像力にはただただ驚くばかり。
熱量を一気に上げた水上槍試合のシーンの見応えには意表を突かれた。但し、そこでも水面の光の反射を活かした映像が素晴らしかった。
どのシーンも もはやため息レベル。とても70年も前の作品とは思えない、モノクロの鮮やかな映像美にひたすら酔いしれる作品だった。