菩薩

ラ・ポワント・クールトの菩薩のレビュー・感想・評価

ラ・ポワント・クールト(1955年製作の映画)
3.6
想田和弘の『港町』も「猫」と「生と死」の映画だったが、どうやら港町に猫と生と死が付き物と言うのは世界共通らしい、「猫たち、ところどころ」である。想田の観察映画程ドキュメンタリータッチな訳では当然無いが、とは言え全てが映画的であるという訳でも無い、愛を見失いかけた1組の夫婦が夫の出身地である港町を歩き回り、町に溶け込む過程の中で都会的かつ理性的に愛を取り戻すのに対し、その町の住人達は質素でありながら自然に寄り添った生活を謳歌しつつ、野生的かつ本能的な愛を獲得していく。獲りすぎれば海は痩せ生活も立ち行かなくなる港町、子を産みすぎた母は幼子を亡くし、増えすぎた猫も人の手により葬り去られる。この作品の二つのストーリーラインは平行線を辿り、夫婦の視線も交錯する事無く映画は進行して行くが、最後の祝宴で遂に夫婦と町とは一体化を果たす事になる。非シネフィル故の自然なタッチ、我々が思い浮かべる「ヌーヴェルヴァーグ」の作品とは趣を異とする謂わば「凪」の作品であるが、この作品が映画の新たな潮流の始点となった事実は、我々映画を愛する者にとっては「幸福」な結末、はっぴぃえんどではなかろうか(無理あるけど最後老音楽家が四人並んだショットで終わる…)。
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