吉田コウヘイ

37セカンズの吉田コウヘイのレビュー・感想・評価

37セカンズ(2019年製作の映画)
5.0
顔の産毛まで見えるほどのファースト・カットから、執拗なまでのクローズアップが続く。ダルデンヌかケシシュか、というくらいグーっと、主人公の心に入っていく。世界を発見する喜びと、母親との愛憎や日常に溢れる不寛容と差別への悲しみを観客はともに体感する。

悲しみがピーク近くまで高まったギリギリで、『37 Seconds』はロードムービーとしての本質を露わにする。本当の「ただいま」を言うまでのロードムービー。
私たち人間が生み出すすべての物語は旅だ。私たちの人生が、自分と出会う旅なのだから。

監督・脚本のHIKARIさんは信じている。物語を、映像を、素晴らしい俳優たちを、観客の感性を。それはとても強く、美しい。