ベンジャミンサムナー

37セカンズのベンジャミンサムナーのレビュー・感想・評価

37セカンズ(2019年製作の映画)
4.5
 「妄想だけで書いたエロ漫画なんて読んでも面白くないでしょ?」

 本作がNETFLIXで配信されてる事を後で知ったが、結果的に映画館で観て良かったと思う。

 近年は『誰もが愛しいチャンピオン』や『ザ・ピーナッツ・バターファルコン』等の障害者を主役に起用した作品が続けざまに出てきているが、個人的にその2作はまだ障害者に対して気を使ってるように感じられた。
 だが、本作の佳山明演じるヒロインのユマは、冒頭でいきなり裸体を晒すわ、エロ漫画を描くわ、その為に風俗街へ繰り出すわと、より障害者への目線がフラットになっている。
 それに、実際に脳性麻痺の女性を主役に起用しているが、本作から"障害"の要素を取り除いても「過保護な母親と自立したい娘のドラマ」としてほぼ成立する話になっている。
 だからこそ、ユマは障害のあるなし関係なく共感できるキャラになっている。

 その上、ユマがすごく今風の絵柄の漫画を描いてる事や、主題歌がCHAIのPOPな曲である事が、「障害者映画」につきまといがちな重苦しさをほとんど皆無にしてくれている。
 さらに、後半のしんみりする場面はとても抑制された演出で決してお涙頂戴には流れない。

 障害者である事を抜きにして、唯一無二の輝きを持ったヒロインを生み出した傑作である。