暴力と破滅の運び手

METライブビューイング2018-19 ワーグナー「ワルキューレ」の暴力と破滅の運び手のレビュー・感想・評価

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ドイツ語圏あたりの頽廃的な読み替えワーグナー演出を立て続けに見てウッってなってたんだけど、こういうのを見るとデジタル映像の時代にこういうトラディショナル寄りな衣装や小道具でワーグナーをやることの限界を感じてしまうところもあり(ライビュ映像はどうしたって記録映像なので銀色が安っぽく見えてしまう……)、難しいですねという気持ちになった。
ルパージュお得意の大規模舞台装置とプロジェクションマッピングも、例えば『ファウストの劫罰』みたいにちょっと見たこともないような地獄を見せてくれたりとかではなく、妙にしょぼいスペクタクルって感じ。変な話20世紀末の初代プレステのファンタジーもの大作RPGのムービー動画、もっと悪辣なことを言うなら実写版セーラームーン(2003)みたいな質感に見えてしまう。第3幕の「それが馬になるんかい!」はちょっとよかったけど……最後なんかエヴァみたいになるし……。生で見てもあんまり感想変わらない気がする(スカスカだなってなりそう)。
まあぐちぐち言ったけど人間の動かし方と配置がいいから割と見れるし、演技の付け方もかなり人間くささに振り切っていて良くできていると思う。第1幕のジークムントとジークリンデが同じ盃の水を飲み合うところなんかとてもいいし、ヴォータンやフリッカ、ワルキューレや戦乙女たちもとても魅力的。まああんまりワーグナーでそれをやられても感があるんだけど……(演技が軽いとどうしたって音楽の重厚さに負けてしまう)。ルパージュはワーグナーとあんまり相性がよくないのかも。