ピエロ

楽園のピエロのレビュー・感想・評価

楽園(2019年製作の映画)
3.6
私は田舎の閉鎖感というものがよく分からない都会の人間だけど
田舎の風景そのものが好きだし
その土地の空気や都会にはない雰囲気やにおいや温度が好き。
実際このような未解決事件が起きたら
わたしだって疑心暗鬼になるだろうし誰かを貶めてしまうかもしれない。

あの分かれ道がとても印象に残っている。
静かで遮るもののない場所。
狭い集落では村人の誰もが通るたびに思い出してしまうだろう。
犯人が捕まらないことへの苛立ちと重責の念と募る不満。閉鎖感のある限界集落に不穏な空気が充満する。
やがて外から中に入ってきた異物に対してぶつけられるそれがいつしか凶器になり事件を呼び寄せる。
手を取り合ってきた隣人達との絆など
なかったかのように疑いの目に変わる。


ここに残された者たちはどうすれば良かったのか。いつまで経っても捕まらない殺人犯を追いかけ隣人を疑い部外者を除け者にし平然を装い取り繕い生活する以外に何ができたのか。
そこには答えなどない。
ただひたすらにあの子が生きてどこかにいるという一縷の望みに縋りつき、後悔という名の重い荷物を背負い生きていくしかない。
誰も信じられなくなってもその可能性を信じなければ生きていけないから。
自分だけが生きて幸せになるだなんて辛すぎるから。
生きててほしい。
どうか幸せな楽園で元気に笑顔で笑っていてほしい。
そういう祈りと希望の映画だと思った。
誰からの救いなどなくても遺された側が自分の楽園を探して生きていく物語。


それにしても暗かった。暗い映画は好きだし田舎の風景が好きだから観れたけど。
にしても精神を削られるね。答えのない映画は。
邦画でしか味わえないものでもあるし
実際こんなしょーもない現実ばっかりだよね。もう実話でええこんなん。
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