TAK44マグナム

モンスター・フェスティバルのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

4.0
ホラー映画は劇薬なのか?


「ホラー映画は作り物だから安心して観られる。だからハマったんだ」という主人公に共感しかない、ホラー映画ファン向けのホラーコメディ。
リアルに殺人鬼に母親を殺されたからこそ、その反動からか主人公は病的なほどのホラー映画ファンになってしまいます。
しかし、妻を殺された父親は「ホラー映画が害悪なのだ」と強く思うように。
この親子の対立した嗜好がとんでもない悲劇を生むことになるのですが、これまたとんでもない数の人々がとばっちりを食らうことになるのが笑えないほど酷い(汗)
そんな映画であり、どこまでもホラー映画愛にあふれているのがグッとくるしかないポイント。


ホラー映画の祭典、「ブラッドフェス」。
父親に行くのを反対されてチケットを没収された主人公だったが、知り合いの女優のツテを頼って入場できるように。
友人たちと意気揚々、最高の夜を楽しんでいたが、「ブラッドフェス」の開催には真の目的があった。
それは、社会悪にしかなり得ないホラーファンを一網打尽に葬り去ること!
開幕セレモニーでステージに現れたのは本物の殺人鬼たち!
突然はじまった残虐な凶行に驚いた参加者たちはパニックになって逃げ惑い、主人公たちは会場から脱出する術をさぐる。
だが、ゾンビや拷問魔、吸血鬼や殺人ピエロが次々と襲ってくるのであった。
危機また危機をホラー映画の「お約束」で掻い潜り、やがて主人公は恐るべき真相を知る事となる。
はたして、地獄と化したフェス会場から無事に脱出できるのであろうか・・・?


かなりSFというかファンタジーというか、「そりゃいくらなんでも無茶だろう」みたいな説得力のない設定も散見されますが、全てはホラー映画ファンを楽しませようとする作り手の優しさ故。
というか、こんなホラーなワンダーランドでワーワーキャーキャーしていたいんだ!という子供っぽさが垣間見えてハッピーですし、もしも「ブラッドフェス」が日本で開催されたら絶対行く!と思えた次第。
でも殺されたくはない(汗)

まぁまぁコメディな味が濃密でありながら、終盤で明かされる殺戮の理由は興味深かったですね。
黒幕の言い分には矛盾しかない。
すでに狂っているからなんですけれど。
だって目的のためには醜悪なプロデューサーとも手を組むし、何より○○○を○○○に育ててしまうわけですから。


ホラー映画が代表作になってしまった俳優がねじ曲がった性格になってしまっていて、それが主人公と接しているうちに救われるのは泣けました。
ロバート・イングランドとかはセルフパロディも嬉々としてこなしているように見えますけれど、ホラー俳優さんたちは「ホラー映画」をどう思っているんでしょうね。
たんなる「仕事」なのか、「文化」なのか。
そういえば「13日の金曜日」でヒロインを演じた女優さんはストーカー行為などに悩んで、それが元でパート2では冒頭で殺される設定になってしまった・・・というエピソードを思い出しました。
結局、女優業も続けられずで、まさに人生に影響がでてしまった例ですね。
日本では、昔は特撮とかでブレイクすると「お化け俳優」と揶揄されたみたいですし、何が俳優人生を左右するか分かりません。
現在はホラーだろうが何だろうが、ちゃんと市民権を得ているとは思いますけれど、殺人鬼役を格好いいと思ったりするのはおかしいんでしょうか。
いや、そんな事は無いでしょう。
所詮は映画です。
観る側も、作り手側も、楽しんだもの勝ち。
もっと殺っちまえ!と笑いながら観ても、別に頭がおかしいわけじゃないですよ!
と、頭の中で力説していたら「SAW」っぽい拷問器具が血しぶき飛ばすものだから、この映画は信用できる!と脳みそがマキシマム活性化しましたよ(笑)
マジでヒドい!可哀想で最高!


「シャザム!」のザッカリー・リーヴァイが登場したと思ったら速攻で退場させられたり、お遊びも楽しい。
ホラー映画に精通していれば生き残れるのもふざけていて好きですし、たくさんのオマージュが歴史あるホラーの先輩諸氏を正しくリスペクトしていて好感持てました。
B級的なマインドにあふれながらも意外と深いテーマに唸らされる良作。
「スパイダーマン」の「椅子の人」も安定の童貞役で場を和ませてくれますぞ〜。


レンタルDVD(GEO)にて