小学生の頃、この世で一番怖い父親に言い返すことなんてできなかった。
中学生の頃、母親の小言にいちいち腹を立てていた。
そして大人になった今、父親と言い合うようになり母親の言葉にも耳を傾けるようになった。
自分が変わったんだ、そう思っていた。
でも多分ちょっと違う。
本当は、親も変わったんだ。
とても弱かった自分がゆっくりと強くなっていく中で親も少しずつ弱くなっていたことに気づけなかったんだ。だから実際のところ自分は思ったほど強くなっていないのかもしれない。
敵わない人。叩いても蹴ってもビクともしない、それが親だった。
でもいつか来る、普通の人みたいに転んで泣く親を見ちゃう時が。
その時に優しくし出して間に合うのかってくらい親は今まで自分に優しかったんだとやっと気づく。
お母さんも、お父さんも、
いつまでも強い訳じゃない。