なみき

Girl/ガールのなみきのレビュー・感想・評価

Girl/ガール(2018年製作の映画)
5.0
ちょっと岩井俊二監督を彷彿とさせる映像で、バレエダンサーを志すトランスの女の子の姿を描く作品。

とにかく主演の子の演技がとてつもないです! 演じているのはシスの男の子らしいのですが、ぜんぜん見えない。仕草、表情、雰囲気、何もかも完全に女の子だし、弟にかつての名前を呼ばれたときとか自分の体を鏡ごしに見るときとかの表情が、すごく情報豊かで、よくこんな子を見つけたなと驚きました。

ダンスシーンもよかった。わざと手振れを入れた映像で切り取るのがいいですね。臨場感もあるし、きれいでした。

そして全編にわたる焼け付くような苦しさ。お医者さんもお父さんも、ホルモン治療さえしなくても「もうすでにいまのままで素敵な女の子なのだから」と言い、バレエ学校にも女子生徒として通い、更衣室も使っている(ただし更衣室の使用のために他の女子生徒の意思を確認するシーンがあり、そこでも複雑な表情を見せる)。日本のフィクションでよくある設定に比べると、他の生徒から好奇の目で見られるようなつらいシーンはありつつも、全体としてかなり女の子として暮らせているように思う。それでもどうしようもなく自分の体に抱く嫌悪感。それがだんだんと高まっていく様子が見ていてつらい。

とにかくすごい作品でした。いまのところ今年見たなかでいちばん好き。
なみき

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