津軽系こけし

グリーンブックの津軽系こけしのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.5
それはお前の席だ


読者諸賢お久しぶる。私生活がようやく落ち着きましたので、拙いレビューを再び書き殴ってゆく所存です。

人種差別云々よりも、バディモノとしての完成度がすこぶる輝く一作。
気取りぎみな黒人ピアニストと、粗野な白人。文字にしてみても明らかに噛み合わない2人が、心を通わせてゆくシークエンスはいちいちスマートである。

トニーの行儀悪い所作に顔をしかめるドク。車内で幾度と横行する”お説教”会話劇には、人間的な愛らしさと奥ゆきが共存している。節々のシーンにもキャラクターの心情や葛藤が表現され、バディモノとしての厚みが生まれている。
そして、南部黒人差別モノの映画としても貴重な作品に思う。万年の歴史を誇るアメリカ映画史であるが、南部黒人差別モノは”諸事情”により滅多に完成しないのだそうだ。しかも今作の舞台は現代からほど近い60年代にも関わらず、その語り口はじめじめと黒人差別の深さを物語っている。正味、完成に至っただけでも凄いと個人的には思う。

2人の友情の暖かさ煌めく作品。ヴィゴモーテンセンの荘厳たる佇まいはさながらアート、素晴らしいおじさんニズムだ。許されるなら30分ぐらい眺めていたい。
津軽系こけし

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