DJりん

グリーンブックのDJりんのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.7
最高見た映画の中では断トツで面白かった作品。
まず最初はこういった差別をテーマにした作品ではありがちな露骨な差別のシーンから始まるけれど、そこからの展開が既存の作品とは少し違っていてとても良かった。
面接時にあんな態度だったトニーをドクが取るっていうのもありがちではあるけれど、その後の流れは斬新で面白いなと思った。
そして旅を続けていく中で少しずつ2人が互いのことを知り、人種を超えて心を通わせていくが、中々そうスムーズに上手くは行かないという部分もリアリティがありとても良かった。
確かに長い間トニーみたいなちょっとアウトローな仕事とか、環境に居れば汚い言葉を使うとか、社会のルールを破るとかが当たり前になるということも充分理解出来るけれど、それは誇りを持って生きてきたドクからしたら不思議でしかないという様な描写も素晴らしかった。
そしてどれだけ差別されても誇りを失わず、気高く生きてきたドクからしたら「どうしてそんなことを恥ずかし気もなく言うのだろう?」と不思議に思う部分にも凄く納得ができた。
ただ最初のトニーは私的には結構アウトローだなとは思ったけれど、性根は決して悪く無いし意外と賢いから、ドクと仲良くなれたのではないかなと思った。
いくらアウトローに近いとは言え全てを「力」で解決することは出来ないというのを知っていた様に思えたし、何よりこれまで修羅場を潜ってきたからなのか結構やばい場面でも、冷静に場を収めていたのがとても印象的だった。
その為所々のドクの倫理的な諭しにも、嫌々ながら聞く耳を持つことができたのだろうなと思った。
こんな感じで育ってきた環境や見てきた景色が全くと言っていいほど違う2人だけれど、旅を通して優しくなったのは間違いないなと感じた。
ドクも黒人でありながら農作業とかの労働者ではなく、性的にも人と違うという苦しみを抱え長い間孤独だったので、優しさに欠けている部分は確実にあった。
けれどドクのさり気ない優しさや気遣いに触れる内に、少しずつ冷たく閉ざしてしまっていた心を開き、表情が豊かになっていく様子が本当に素晴らしかった。
ドクはドクで最初は上でも書いた通りアウトローに近いチンピラみたいな感じだったけれど、旅の終わりには雰囲気が格段に柔らかくなり品のある男に変わっていた所が凄いなと思った。
そして何よりこの作品をクリスマスの時期と被せているのが素晴らし過ぎるなと感じた。
トニーはドクのお陰で恐らくずっと孤独で冷たくなっていた心に仲間の「温もり」をプレゼントし、ドクはトニーに品格と誇りを大切にする「気高い心」をプレゼントした様に思えた。
こんな感じでストーリーは進んでいくので、最初は130分ということで多少飽きるシーンもあるかなと思ったけれど、驚くほどにそれは無かった。
評価4.2というのも納得の素晴らしい内容だと思うので、多くの方にオススメしたくなる作品だった。
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