恭介

グリーンブックの恭介のレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.2
もう、なんかねー

イヤになるぐらい
いいトコだらけの映画なんですよ(笑)

いいトコ挙げだしたらキリがない
ぐらいドラマとしては最高の映画。

人種差別による、いや〜な気分になる
シーンはいっぱいある。

けど、そんなシーンを打ち消すように
微笑ましいシーンが目白押しなんで
人種差別を題材にした映画では珍しく
観終わったあと、何とも言えない
幸福感に包まれる稀有な映画。

しかも実話をベースにしてるのが驚き。

かたや天才的ピアニストの黒人。
かたや定職のない喧嘩っ早い白人。

この水と油のような関係性の2人が
出会い、信頼と友情を築き上げていく
ロードムービー。

まず、主役の2人がいい。
高潔な人間界の王、アラゴルンとは
対極に位置する役を内面と外見で
完璧に役を体得しているヴィゴは
素晴らしいの一言。

また、繊細かつ芯の強さをもつ
複雑なキャラクターを見事に演じた
マハーシャラ・アリ。

この2人が揃っているシーンに
全く無駄なシーンはないほど
2人の演技のケミストリーが素晴らしく
ずっと観ていたくなる。

前を見て運転しなさいっ、や
世界一、ケンタッキーが美味そうに
見えるシーン

ヴィゴが奥さんに宛てる手紙を
アリがアシストするシーン。

黒人専用のバーでの演奏シーン。

ラストにアリがヴィゴの家に
訪ねてくるシーンと奥さんの抱擁。

などなど他にも、たわいもない会話の
微笑ましくなるシーンが目白押し。

しかしそれらのシーンの間に
あの時代の黒人差別がいかに理不尽で
当たり前のように行われていたのかが
象徴される場面が何度も出てくる。

もっともこの2人も最初から立場が違う。
当時の常識だと黒人が使用人で
白人がご主人様だ。

しかし、黒人のアリがヴィゴを雇う
立場になっている。

作中でヴィゴが
お前より俺の方がクロだっ、と
自分の生活環境をボヤくシーンがある。
黒人のお前は金持ちで白人の俺は底辺で
生活しているという、ある種の差別意識だ。

しかし、旅を続けていくうちに
ヴィゴは自分の想像を遥かに超える
アリへの差別を目の当たりにする。

しかもアリは敢えて自分から
差別意識がもっとも激しい南部
ディープサウスへのツアーを考えた。

激しい差別に毅然と立ち向かい
感情を押し殺して耐えているアリの
姿を見てヴィゴの考えが変わっていく。

この過程を丁寧に描き、水と油が
ゆっくり混ざっていく2人の友情を
フィルターにして、人種差別の
醜さを浮き彫りにしていく語り口は
見事だ。

ただ、やはり本作はあくまでも
2人の友情にフォーカスした作品として
成り立たせているので
それが観終わった後の幸福感に
繋がっている。

この2人のように、最初は衝突しながらも
徐々にお互いを理解して育んだ友情は
本物の友に発展していく。

ただ、その為にはお互いが素直な心を
持ち合わせないと、なかなか大人に
なって本物の友情を築く事は難しい。

だからこそ今からでもそんな人に
出会ってみたいと思わせてくれる。

寒いこの時期にはピッタリの
心があったかくなれる映画だ。

本場のケンタッキーフライドチキンを
食べて骨を捨てたくなるが

飲み物は車窓から捨てると
怒られるよ(笑)
恭介

恭介