おーたむ

グリーンブックのおーたむのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.4
公開日が1日の作品賞受賞作なら観に行かない手はないと思って映画館へ。
敷居もそれほど高くなく、スッと物語に入っていける、面白い作品でした。

「最強のふたり」を思い出すという声からもわかりますが、本作はひねりの効いた新しい映画というわけではなく、バディ・ムービーらしいバディ・ムービー。
実話がベースだという点、孤独なインテリの使用者と、粗野ながら憎めない雇用者という構図もよく似ていて、差別の対象が障害から人種に変わっただけの、ベタといえばベタな映画です。
しかし、黒人の中のはぐれ者であるために生じる特異な孤独とか、才能溢れる音楽家だからこその魅力的な演奏シーンとか、ドクター・シャーリー個人の個性は作品の個性にもなっていて、ベタなだけの作品ではなかったとも思いました。

バディ・ムービーでは作品の出来に直結するとも言える、主人公コンビのキャラクターも、とても良かったですね。
偏屈だけど、高潔で才能があって、実はロマンチストなドクは、やっぱり素敵。
腕っぷしとハッタリでピンチをかいくぐるトニーの頼もしさには、しびれます。
あると思わせて、実はない…と、思わせといて、本当の本当は、ある。
あの切り札の使い方は、ちょっと面白くてカッコいい、良いシーンでした。
本作はこういう「と思わせて」が小気味よくて、ニヤッとさせられたり、クスッとさせられたりして、楽しかったです。

感想としては、差別という普遍的なテーマを、優しいユーモアで描いた、普通に良いドラマ作品だったなという感じ。
鮮烈なインパクトはありませんが、変に尖ったところもなく、誰にでもおすすめ出来そうな作品だと思います。
もっとも、際立って個性的な作品というより、収まりの良い秀作といった印象があるこういう作品が作品賞を取ったというのは、意外でもありましたが。
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