Shirorin

グリーンブックのShirorinのネタバレレビュー・内容・結末

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

1962年、ニューヨークのナイトクラブで用心棒として働くトニー・バレロンガ(ヴィゴ・モーテンセン)。ある日、クラブが改装工事をするため、無職となり、家族を養うため、黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)に出会い、差別意識の強い南部での8週間のツアーの運転手(兼ボディガード)として雇われることとなり、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに車を走らせるー


『デトロイト』『ドリーム』、ついこないだは『ビールストリートの恋人たち』でも観たように、黒人というだけで、白人と同じトイレやレストラン、ホテルを使うことができなかったり、警察👮‍♀️にIDを求められたり、不当に逮捕されたりする時代。

アカデミー作品賞、助演男優賞受賞は嬉しいけれど、ほんの少し前までホワイトオスカーだったことを思うと、『ブラック・クランズマン』のスパイク・リーがまた受賞できず、差別する側の目線で黒人を寛容に受け入れる白人を描くことで、白人の気分を良くさせる本作の受賞は、人種問題に対してとても表面的決着に見える。

だが、それを抜きにしても、本作はとても分かりやすいストーリー、素晴らしい2人の演技で、万人ウケする良作だと思います。

『ムーンライト』でも、主役より印象的な役どころだったマハーシャラ・アリ。彼は背が高くて、とても姿勢が良い。そして品がある。『アリータ』でも、洗練されたお洒落なスーツをビシッとキメてましたが、今回は初めての登場シーンでのアフリカの王様みたいな格好もインパクト大で、似合っていました。

指も長くて綺麗で、本当のピアニストみたいで、黒人バーでのショパン(ジョーパンじゃないよ笑)の木枯らしのエチュードには、鳥肌が立ちました。
あのシーンはホント大好きです。
カーネギーに住む彼が、お金も教養もないような黒人を相手に、お酒🥃が置いてあるピアノ🎹を、いつもスタンウェイしか弾かないのに、弾くの…?とドキドキしました。ど素人でも一瞬で分かる彼のピアニストとしての才能は、やはりクラシックならでは。いつも黒人からもはみ出し者、白人からは差別を受け、孤独を感じていた彼が、その後もジャムセッションをして、いつもの知ったかぶり、教養人ぶった白人相手の演奏とは違い、客と一緒に音楽を心から楽しんでいるのが良かったです。

対するトニーは、ガサツで粗野で、すぐに手が出る、無教養で、大食い(ピザ一枚を折り畳んで食べる姿に唖然)で、シャーリーとは正反対。
けれど、道中、お互いにないものを与え合いながら、友情と呼べるものを築いていく。

ナイトクラブで働いていたトニーは、いい音楽を聞き分ける耳を持ち、シャーリーの演奏が一流であることを認め、またゲイに対しても、そういうのを知っている、と差別意識がないことに驚いた。
黒人に対しては黒ナスだの、使ったグラスをゴミ箱に捨てたり、かなりの差別主義者だったのに。差別っていうのは、相手を知らないから起こるもの。相手を知れば、黒人なんて〇〇だ、なんて一概に言えないことも分かるし、自分と同じ、なんら変わりない人間だと認め合えるものだと気付かされます。

私の好きなナットキングコールも、ステージから引きずりおろされ、袋叩きに遭ったというエピソードには驚きました…。
オレグから、シャーリーが敢えて南部でツアーをする理由は、天才なだけでは不十分で、人の心を変えられるのは勇気だと聞き、トニーが頷くシーンも好き。

トニーがダチに会って、別の仕事を紹介されそうになるのを、シャーリーが必死に引き止めようとする顔、それに返すトニーの顔、このやり取りも好き〜。

シャーリーはトニーに、我慢することの大切さ、常に品をもつこと、言葉遣い、手紙の書き方、を教える。
トニーはシャーリーに、フライドチキンの美味しさ、腕っぷしの強さやワイロ、ハッタリで乗り切る力、寂しい時は自分から動くんだよ、ということを教える。

ラストのクリスマス🎄ディナー。
一度は誘いを遠慮したのに、やはり訪れたシャーリーを温かく迎えるトニーの家族。奥さんがまたとても素敵。トニーには聞こえないように、シャーリーに「手紙ありがとう」て。

好きなシーンがいっぱいで、無駄がなく巧い脚本に、アカデミー脚本賞受賞も納得。
笑えてホロリとくる2人のやり取りが最高に面白いバディロードムービー。素直にもう一度観たいです。
Shirorin

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