さいきんは随分とごぶさたしてしまっているけれど、レンタルショップのアカデミー賞コーナーがとても好きだった。たしかにそこに並んでいる作品のラインナップはどこかお行儀のよかったり、尖ったインディペンデントな感性というのはないのだけれど、ああ映画を観たよなあという鑑賞後の気持ちや、少しだけやさしくなれるような、清々しい空気を胸いっぱいに吸う感覚がある。
『グリーンブック』に感じたのは、そんなアカデミー賞受賞作としての風格だった。もちろん今日的なテーマを扱っていることが受賞への大きな決め手になっていると思うのだけれど、名優による惜しみない演技、ユーモアのあるセリフのかけ合い、後味として残る確かな感動…そのどれをとっても、子どものころ通っていたあのレンタルショップの棚に並んでいてもまったく違和感ないほど、クラシック然としたマナーが貫かれている。
たしかに、ここが泣きどころですと言わんばかりのシーンにはテーブルクロスを敷くように上品な音楽が流れるのだけれど、我先にと泣きにいきたくなるほど、なんだか、やっぱり映画っていいよなあという気持ちを存分に喚起させる全編だった。クリスマスシーンの美しさには本当にこころを奪われてしまった。