東京キネマ

グリーンブックの東京キネマのネタバレレビュー・内容・結末

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

あまり期待していなかったので、こういうのも変ですが、期待以上の面白さでした。さすがピーター・ファレリーです。

アカデミー作品賞を獲ったのは鑑賞後に知った次第。しかし、何故こんなにも批判されるのか分かりません。「身体障害者や人種を下卑たジョークで笑う下品なコメディ映画」だからなんでしょうが、今までちゃんとファレリー兄弟の映画を観てきたのかなあ、と思ってしまいます。彼らのテーマは終始一貫していて「障害者を笑う人たちや人種差別主義者達を笑う」のです。コメディの主体が違うのですよ。

おそらくね、ピーター・ファレリーは(非難されるだろうことは)充分解っててやっているような感じもするのですが、本作品ではクライマックスがクリスマス・イブなんで、現代のコードに従えば「ハッピィ・ホリディ」です。しかし、そんな言葉は一切出てきません。「メリー・クリスマス」の連呼なのです。それも「メリー・クリスマス」が言える素敵な環境や時代という描写なので、アメリカのリベラルには余計にカチンと来たんじゃないかと思います。ざまあみろ、です(笑) そんなリベラルのイチャモンは気にせずに、この映画をもっと楽しんで観て欲しいと思うのですよ。もうねえ、アメリカ1960年代の風景が素敵過ぎて、ため息ばかりなんですよ。NYの商店街やディープ・サウスの美しい風景、それにBGMがこれまたアメリカン・オールド・ポップス好きには堪らない渋い選曲。それがね、白黒バディのロード・ムービーの舞台装置として紙芝居の絵のように沢山出てくるのです。それと伏線の作り方のお勉強にもなりますよ。伏線で落として、回収は必ずアッパー系でホッとさせるんです。ラブレターの添削も実はバレバレだった訳ですし、黒人が大好きなケンタッキー・フライド・チキン話も、警察官の検問も、それぞれハッピーな形で回収してくれます。

特にエンド・シーンは素敵です。旅の夜、「兄弟と仲違いしているんだったら、自分から誠意を見せないと・・・」と言われて、主人公は決断するんですね。派手なシーンはありませんし、爆笑するシーンも少ないんですが、とてもしっとりした暖かいシークエンスが沢山あります。この爽快感は最近の映画では珍しいですよ、本当に。。。
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