劇的に盛り上がるようなシーンがある映画ではないが、全編を通して主役2人の空気感が良かった。
ヴィゴ・モーテンセン演じるトニーリップは映画冒頭でこそ黒人を差別し侮辱するような態度をとるが、みていくうちにトニーリップがそんな嫌な人間でなく根は素直で人懐こい人物であることがわかってくる。
ピアニストのドクは、白人からは差別され黒人からも受け入れられず、孤独を抱えながらも誇り高く生きているひと。運転手だからという理由だけで外で待たせるようなことはしない。
そんなふたりが時に反発しつつ、その齟齬を受け入れつつ、時には互いに知らないことを教えあったりしながら友情を築いていく過程が丁寧に、ユーモラスに描かれていて感動した。
ラスト付近の黒人しかいないBARでのピアノ演奏シーンでは涙が止まらなかった。
トニーリップの奥さんも素敵。
夫の成長を喜び、新たな友人を笑顔のハグで迎えるラストも素敵だった。
「才能があるだけでは足りない。勇気が人の心を動かすんだ」
この言葉が1番胸に刺さった
「寂しいときには、自分から動かなきゃ」
これは自分も寂しいときにこそ殻に篭もってしまうタチなので耳が痛かった(笑)
挿入歌も素晴らしくて、映画館を出た帰りにはアレサ・フランクリンを聴いて帰った。
いろんな人に勧めたい気持ちはあるけど、自分の心のうちだけに秘めていたいような、そんな素敵な映画だった。
あと、やっぱりヴィゴ・モーテンセンは素敵な人。歳とってお腹が出てもセクシー。ロード・オブ・ザ・リングのころから今もこれからもわたしの永遠のヒーロー。