LalaーMukuーMerry

グリーンブックのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.7
凄~くいい話でした。クラシック&ジャズの黒人ピアニスト、ドン・(ドクター)シャーリーと、彼のdriver & bouncerの白人トニー・(リップ)ヴァレロンガ。1962年という時代を考えると、二人の間にこんな風にして友情ができたというのは、凄い事だと思う。
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フロリダで生まれた黒人の少年がレニングラード(今のサンクト・ペテルスブルク)で音楽の教育を受けたというドン・シャーリーの生い立ち(Wikipediaにはそんな記述はなかったけれど…)。これも凄く異例で興味をそそるけれど、それは置いといて、このお話が成立したのはbouncer(用心棒)という、ちょっと無教養で乱暴者のように思えるトニー・リップが、実は家族や奥さん想いのいい奴だったこと、黒人差別を肯定してはいたが、これはおかしいだろと感じ、考えを変えることができるまっとうな人間性を持っていたということが大きい、と感じる。
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日本で言えば、テキ屋稼業の寅さんだけど、心根は優しくて、妹のさくらや、とらやの家族のことをいつも思っているまっとうな人間であることによく似ている。寅さんは架空のお話だけど、こっちは実話だ。私がとても気に入った手紙のエピソードも本当にあったこと(寅さんも年賀状をちゃんと書いてたなぁ)。アメリカの懐の深さをまたしても感じたワ。
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黒人差別やLGBT差別の酷いシーンを見せて、ダメというのも重要だけど、それよりもっと大切なのは良いお手本を示すこと。それも説教くさくではなく、笑いと涙でごく自然にわからせる、こういう作品は最高に素晴らしいと思う。
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二人はこの作品で描かれた南部演奏ツアーを通して生涯に渡る友情で結ばれたのだけれど、そのことをトニーが世間にしゃべることをドン・シャーリーは許さなかった。これはおそらく、当時は黒人であることよりもLGBTであることの方が名声にとって命とりだから、漏れ出ることをおそれたためだろう。口の軽いはずのトニー・リップが親友との約束を守り、そのプライベートを死ぬまで隠し通したのだ。これもいい話ですねぇ(だからドン・シャーリーが本当にそうなのか? そうではないかと想像されるだけ)。