なっこ

グリーンブックのなっこのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.0
これはきっと何度も見た方が良い映画。

何度も見るだけの価値があるし、何度見ても同じところで笑い同じところでハラハラし、同じところで涙するかもしれないけれど、一度だけでは捉えきれていないユーモアや言葉がきっとあるはずだろうから。

アメリカ南部を旅するふたり、
トニーは窮地に陥ると必ず、
俺らは通り過ぎてくだけの人間だ、だから見逃せという。それは、逆に言えば、彼は通り過ぎるだけで理不尽な目に合うドクの姿を繰り返し見ていくことになったということだ。

カーネギーホールの上に住み王様のように振る舞えるはずの彼が、旅先では粗野で言葉遣いも荒いトニーに頼る他ないその理不尽さ。場所が違えばこれほど違う、その土地の人を判断する目の残酷さ。偏った見方から出ようとしない彼らを責めることはできない、その土地にはその土地の守るべきルールがあるのかもしれない、でも次第に分かってもらえない悲しさ、怖さを彼も共有していったのかもしれない。運転手として旅の運命を共にするうちに。コンサート会場では立派なゲストだけれど、一歩外に出ればただの人。黒人という見た目通りに判断されてしまうこと。
才能も富もあるのに。その場しのぎのデタラメが得意で切り抜けていくトニーも、多分気が付いたのだろう。もはや自分は通り過ぎていくことは出来ない。変わるべきなのはやはり自分も含めて彼らを人扱いしない連中の方なのではないか、そんな風に思うようになっていったのではないだろうか。

生まれや肌の色や信条の違い、囲まれて育った文化の違いで、分かり合えないことも譲れないこともきっとある。それでも、誰かを知っていくことで、少しずつ、見方や関係を変えていけることがある。その文化や育ちを代表する誰かと親密になることが、今まで自分になかったものと出会わせ、世界を広げていくことがある。ゆっくりと。地道に。彼らは旅を通して互いに影響を与えあって、互いに変化した。戻ってきた場所は同じでも、帰ってきたのは違う彼らだ。旅は、そういうものであるだろうし、人と人もそんな風に歩み寄って理解しあって、支え合っていけるもの、きっとそうだと信じたい。そんな風に思えるラストシーンでした。