洋画好きのえび

グリーンブックの洋画好きのえびのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.0
黒人の天才ピアニストのドン・"ドクター"・シャーリーと、そのドライバー兼用心棒のイタリア系アメリカ人のトニー・ヴァレロンガが実際に行ったアメリカ南部のコンサートツアーを基にしたロードムービー。

黒人への差別を合法とするジム・クロウ法が効力を持つ1962年のアメリカで、イタリア系アメリカ人のトニー・ヴァレロンガは、コパカバーナというナイトクラブで用心棒をしていたが、突然、内装工事のためにコパカバーナが休業してしまう。
仕事を探していたトニーは、ピアニストのドクター・シャーリーの運転手の採用面接を紹介される。シャーリーは、黒人差別の根強いアメリカ南部を8週間かけて回るコンサートツアーを計画しており、自身を安全にツアー会場まで運べる運転手を探していたのだった。腕っ節が強く、物怖じしない性格のトニーを気に入ったシャーリーはトニーを採用。南部では黒人が泊まれるホテルが限られているため、トニーは黒人用の旅行ガイドブックである「グリーンブック」を片手に、シャーリーと2人で南部へ向かうのだった…

何というか、とても綺麗にまとまっている映画だなぁという印象を受けた。
本作は黒人差別が根強い時代の黒人と白人の友情物語であり、シャーリーとトニーがお互いの中にある差別心に気付く物語であり、シャーリーの解放の物語でもあるが、それらの要素が上手いバランスで配置されていた。また、殊更に感動路線に持って行くことなく、全体的にあっさりめな演出にしたことで、じわじわと心に沁みてくる作品になったのかなと感じた。
途中、シャーリーが初めて本心をトニーにぶちまけるシーンがあるが、それまでの裕福ではないにせよ、たくさんの家族に囲まれて幸せに暮らすトニーの生活の様子が大量に描かれていたことで、余計にシャーリーの孤独が際立って感じられ、構成もよく考えられているなと感心。
印象に残ったのは最期のオレンジバードでシャーリーがピアノを弾くシーン。バンドと共にピアノを弾くシャーリーの心からの笑顔と、それまでのツアーでの作ったような上品な笑顔との差が本当に素敵だと思った。マハーシャラ・アリ、やっぱりいい俳優だ。ヴィゴ・モーテンセンももちろん良い演技だったけれども、本作が「助演が主演」と言われた理由がよくわかった。

綺麗にまとまりすぎていて少し物足りない感はあるが、黒人差別を扱いながらも後味の良い安心して観られる作品としては良いかな。