Takaomi

グリーンブックのTakaomiのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.6
ナイトクラブで用心棒を務めるトニーは、負けん気が強く気性が荒い。
流暢な口ぶりで言いたいことを言うが、家族や友人からは愛されていた。
ある日、天才黒人ピアニストのドクターシャーリーの南部へのコンサートツアーの運転手兼世話人として雇われることに。

しかし、黒人にとって制約と危険の伴う決して寛容ではない南部を目指すこと、トニー自身も黒人に対して差別意識があることで難色を示すが家族を養うために仕方なく引き受けることに。

この映画の見所は、黒人に対する差別が至るところに蔓延っているところだろう。白人が使うホテルやトイレなどの公共施設はおろか、服屋や飲食店の利用を拒否、警官による不当な検問、生意気などと因縁をつけられ、暴力を受けること。トニーを含めて言葉の節々や態度にまでも差別を感じる。

そして黒人のクラシックピアニストは弾く場所をもらえず、諦めてポピュラーを弾いているとぼんやりシャーリーは言う。

こんなにもひどい扱いを受け、夢を見ることもできなかった時代があったのを知って悲しくなった。

そんな差別を実際に目の当たりにしたトニーが、少しずつ改心して用心棒として友人としてシャーリーを庇うのが胸を打たれる。
納得のいかないことは、手荒く立ち向かう姿は清々しいくらいにスッキリした。

トニーが、シャーリーの演奏をはじめてみて 黒人としてじゃなく、ピアニストとして同じ人として関心し感動するシーン。
思わず隣の黒人の人と目を合わせて微笑んだり、奥さんの手紙に彼は天才だと嬉しそうに語るのはホッとした。
まさに芸術は差別には価しないということだろう。

教養はあるが、裕福な家庭で育ってきて本当の差別や庶民の生活を知らないシャーリーと世間のこと、裏事情や駆け引きには熟知しているが、教養がまったくないトニーとのお互いにないものを補うのも面白いです。

とくにケンタッキーのチキンが服に飛び散るとか文句を言いながら、慣れない手つきで食べるところ。ロマンチックな手紙の書き方を教えるやりとりは最高でした。

しかししきたりやルールなどといった黒人に対する現実を目の当たりにするたびに、怒りや苦しみをピアノにぶつけていきます。
白人からも、黒人からも差別され、はぐれ黒人として我慢して育ってきたシャーリーとしては相当つらいものだったでしょう。
そんな彼もトニーの影響を受け、我慢をやめて立ち向かっていく心境の変化もよかったです。

そしてこれまで難しい顔をして楽しくなさそうにピアノを弾いていた彼が、オレンジバードという大衆バーでこれまでにないぐらい笑顔で嬉しそうに演奏している姿は本当にかっこよかった。

僕もこれまでは差別を受けても面倒くさいと思ってしまって我慢することも多かったけれど、決して我慢せず諦めず立ち向かうということが大切な気がする。
そうすることで、同じような辛い思いをする人を一人でも減らしたい。
我慢しているだけでは良くなることはない。社会にしても何においても。

誰にでもクリスマスはやってくる。「差別」映画でもあり「相棒」映画でもある、バランスのとれた素晴らしい映画でした!
Takaomi

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