kkkのk太郎

グリーンブックのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

思想も人種も経済環境も違う2人が、ディープサウスを旅することにより友情を育んでゆく様を描くバディ・ロードムービー。

主人公トニー・リップを演じるのは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『はじまりへの旅』の名優ヴィゴ・モーテンセン。
トニーを用心棒として雇う、天才ピアニストのドクター・シャーリーを『ベンジャミン・バトン』『ムーンライト』の、オスカー俳優マハーシャラ・アリが演じる。

🏆受賞歴🏆
第91回 アカデミー賞…作品賞、脚本賞、助演男優賞(アリ)の三冠を達成‼️
第76回 ゴールデングローブ賞…脚本賞、作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、助演男優賞(アリ)の三冠を達成‼️
第43回 トロント国際映画祭…ピープルズ・チョイス・アウォード!
第72回 英国アカデミー賞…助演男優賞(アリ)!
第90回 ナショナル・ボード・オブ・レビュー…作品賞!
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実話を元にした伝記映画だが、その内容はかなり脚色されているようである。
当時30代前半だったはずのトニー役に、ヴィゴ・モーテンセンがキャスティングされていることからも分かるように、実話をベースにした創作であると認識した方が良いだろう。

粗野で乱暴、ギャンブル好きで無学だが、口上手で機転の利く、家族を愛する合法磊落なイタリア系移民のトニー。
彼の雇用主であり、繊細かつ知的、常に冷静だが少々世間知らずで、融通が効かないところがある黒人のシャーリー。
正反対の2人が、旅を通して友情を築いていく様子は定番ではあるがやはり楽しい。
トニーが書く手紙を、シャーリーが添削し助言を与えている場面は微笑ましすぎて何故か泣ける。

旅に出る前のトニーは黒人、ドイツ人、アジア人、ユダヤ人など、自分と異なる人種の人間に対して差別的。
ただ、これは60年代初頭のアメリカ人としてはおかしなことではなく、寧ろ普通の感覚だったのではないだろうか?
彼は世間の「普通」に順応して黒人を嫌悪していたのであり、特別な理由があって差別をしていたわけではない。
その為、持ち前の陽気さですぐに黒人たちとも仲良くなり一緒にギャンブルをして遊んでいる。
だからこそ、ディープサウスのあまりに苛烈な差別意識に困惑し、怒りを覚える。
そして、自らの差別意識の間違いに気付き、意識を改める。
広い視野を持ち、実際の体験を経ることこそが偏見を無くすのだということをこの作品は説いているのである。

人種差別の描写は気分が悪くなるほど陰惨。だが、映画全体の雰囲気はコメディ調であり、娯楽作品として楽しめる。

この映画の魅力はやはりシャーリーというキャラクター。
黒人でありながら大富豪。その為、他の黒人の人たちに馴染むことが出来ず、孤独な心を抱えている。
貧しいながらも家族や友人に囲まれているトニーとは対称的であり、天才的な資質や物質的な豊かさが必ずしも幸運とは限らないことが示唆されており、この辺りも映画として上手いなぁと感じる。
この複雑なキャラクターを演じ切ったマハーシャラ・アリの技量には脱帽。賞を総なめにするのも分かる。

娯楽作としても楽しく、人種差別のことを考えることも出来、2人の友情に涙することも出来る。
素晴らしいクオリティの映画だが、ケチをつけるとすれば音楽描写が平凡だったところ。
特にクライマックスのバーでの演奏はもっと盛り上げても良いと思う。リトル・リチャードの「ルシール」を演奏しても良かったかも。

また、シャーリーのゲイセクシャルの描写も取ってつけたようで、あまり必要性を感じなかった。
同性愛者の黒人という、人権派の人達が喜びそうな設定ではあるが、人種差別というテーマ性がぶれてしまうのであまり良いとは思わない。

一番気になったのはシャーリーの兄。如何にもな感じで会話に出しているのだから、やはり兄に向けて手紙を書く場面は必要だったのではないかと思う。

多少の傷はありますが、アカデミー賞で作品賞を受賞するのも納得な傑作!
全人類に見て欲しい一本です。
kkkのk太郎

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