七沖

グリーンブックの七沖のレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.6
〝行こうぜ、相棒。あんたにしか出来ないことがある。〟
これは良かった!バディものだとすぐ分かるキャッチコピー。

まだ黒人差別が根深い時代の1950年代アメリカ。黒人ピアニストのシャーリーは、差別がはびこる南部のツアーに赴くため運転手の求人を出す。応募してきたのは、黒人への差別意識バリバリのイタリア系白人のトニーで…というストーリー。

諍いを通してお互いを認め合っていく…バディものの鉄板展開。かたや教養高い黒人男性・シャーリー。かたや粗野で腕っぷしの強いイタリア系白人・トニー。そんな共通点のない凸凹な二人の前に立ち塞がる障害は、南部の人々による黒人差別だ。
これをシャーリーは誇り高い心と忍耐で、トニーは機転と胆力で乗り越えていく。
こんなの面白くないはずがない!
特にケンタッキーフライドチキンのやりとりは笑ってしまった。おずおずとチキンを素手で受け取るシャーリーが可愛い。

シャーリーが行く先々で受ける差別には気分が悪くなるが、こうした差別が本当にあったことを考えると、やるせない気持ちになる。
学生の頃、男用・女用の他に黒人用のトイレがあったのだということを習った。その時は「そうなのか…」と思っただけだったが、シャーリーが屋外のトイレを勧められるシーンに思わずハッとなった。
ゲストとして歓迎されながら、トイレは当然のように別だと言われる。この怒りや悲しさは、教科書で読んだだけじゃ分からない。
今回、自分はシャーリーという登場人物を通して、これがいかに屈辱的なものなのか多少知ることができた。もちろん、本物の経験には及ばないが、体験したことがない出来事や思いを疑似体験できるのは映画のいいところだ。
これからも色んな映画を通して、たくさんの価値観や経験をしていきたい。そんなことを思った。
七沖

七沖