たす

グリーンブックのたすのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.7
黒人差別の厳しいアメリカ南部をあえてツアーする黒人ピアニストのドンシャーリーと、運転手として雇われたトニーとの交流を描いた作品。

何回泣いたとかじゃなくて、後半は終始泣いてしまった。というか泣きながら笑ってしまった。まさに笑あり涙あり!泣きすぎなのが悔しくてちょっと泣かせにきてるでしょってつっこみたくなったけど、実話を基にしているし何より自然と感動してしまうからもう文句の付けようがない。

トニーは冒頭、黒人が使ったコップをそっとゴミ箱に捨てる。トニーは決して悪い人ではないが、普通にこんな行動をしてしまうほど、人種差別は当たり前の世の中だった。そんなトニーはシャーリーと旅をする中で、想像以上に厳しい人種差別を目の当たりにしたり、シャーリーのピアノの腕や人間性を知るうちに、考え方がどんどん変わっていく。

一方のシャーリーは北部で豪邸に住みながら何不自由ない生活を送る売れっ子アーティスト。にもかかわらずあえて南部でのツアーを決行し、しかも夜一人で出歩き警察沙汰にもなる。

「私は独りで城住まいだ。金持ちは教養人と思われたくて私の演奏を聴く。その場以外の私はただのニガー、それが白人社会だ。その蔑視を私は独りで耐える。はぐれ黒人だから。黒人でも白人でもなく、人間でもない私は何なんだ?」

このツアーは旅の中で出会う白人や見ている私たちに人種差別の実情について意を唱えたいということもあるだろうが、彼自身のアイデンティティを探すというか、居場所を見つけたかったのではないかとも思う。

旅の中で様々な経験を共にしたトニーとシャーリーが、深い友情で結ばれていく様子がすごく良かった。終盤、トニーがクリスマスイブに間に合うようにシャーリーが代わりに運転したシーンや、トニーがクリスマスパーティにシャーリーを笑顔で迎え入れたシーンは本当に最高だった。
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