GodSpeed楓

コンジアムのGodSpeed楓のレビュー・感想・評価

コンジアム(2018年製作の映画)
3.8
「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」と「グレイヴ・エンカウンターズ」を韓国で混ぜたやつ、と言えば聞こえはだいぶ悪いが、双方の良いところを足して、より良くなった快作。1+1が2を越える、"POVホラー界のカツカレー"みたいな映画だ。

安さ爆発が売りの他モキュメンタリーとはひと味違って、様々なカメラを使用しているのが本作の大きな特徴。これだけ経費つぎ込んでるからこそ、隊長の儲け優先の行動にはまぁまぁ説得力が生まれる。しかし、ドローンを使ったPOVの新たな視点は特に生かされなかったのは残念。上からの視点で新たな恐怖シーンを演じてくれれば最高だったのだが、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」のラストシーンで披露された古(いにしえ)の技法である"秘技・カメラ落とし"という技術を頻繁に使用していたのは気になった。上述した2作品よりも優れている点としては展開と早さと多さ。モキュメンタリーは作品形態上、非常に展開が遅いという点が挙げられるのだが、本作は他に比べてまぁまぁ早いのでは無かろうか。特に「グレイヴ・エンカウンターズ」に至っては40分くらい何も起こらない挙句、事が起こった後も欧米映画らしい無駄な口喧嘩を披露してくれる。

モキュメンタリーなので当然ストーリー性は皆無で感情移入もする必要は無いのだが、面白半分どころか完全に利益目的での行動のため、彼らの行動は1から10まで自業自得なので何一つ同情できない。調子こいた若者集団や、引き際を誤る奴はすべからく酷い目に遭うのは映画界ではテンプレと化しているのは既に周知の事実になっている。という事は、製作者側もイキッた連中が嫌いな陰キャ集団であるのは間違いないだろう。そういったメタファー的な視点を楽しめそうな方は「キャビン」をどうぞ。

ホラー映画の基本だが、とにかく目を逸らした後にヤバイ事が起きる。「REC」でも目を離したスキに少女に襲われたし、緊張と緩和の使い方としては基本的戦略と言える。このルールを踏襲せずに主張全開で脅かしてくる佐伯家(呪怨)のようなアイコン的なキャラが存在しないと、この技法に頼らざるを得ないのかもしれない。

顔を隠されると「黒目がちな少女(NUMBER GIRL)」にされてしまう必殺技が本作の代表的な呪いだ。追加でスキャットマンのような早口も会得できるので、意識さえ残っていれば案外メリットなのかもしれない。他にも成人男性すら持ち上げる膂力、いつの間にか車イスに固定する、ポルターガイスト現象、天井に水を溜める、隊長の承認欲求を満たす幻覚を見せるなどなど、当該病院に蔓延する呪いは様々な能力を発揮する。しかし本作は何一つとして事実が明らかになるような事は無く、事象に関する理由付けも何一つ描写されていない。調子ぶっこいた若者達が散々な目に遭って終わる、という非常にシンプルな作品である。実は配信されていて、呪いが拡散するような貞子的なパワーも発揮されないらしい。しかし、コンロがフルテンになるという脅かし方は他作品では全く観たことが無いので流石に笑ってしまった。何かに燃え移ることもなく、ゴウゴウと燃え盛るコンロはシュール極まりない。

ウダウダと書いたが、観てる間はマジで緊張感のせいで口の中がカラカラになった事は、ここだけの秘密だ。画面が基本的に暗いせいで、テレビの画面にキモい男(僕の事だ)が常に映るという呪いが最初に発動したので、部屋を真っ暗にして観てしまったのが失敗だった。

結構怖かったので、ラーメン食らって走り出したい。
GodSpeed楓

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